レニー™※の新たな可能性:耐衝撃性を高めた新規開発グレードのご紹介

※ポリアミドMXD6をベースレジンとするポリアミド樹脂系成形材料
産業機器やエレクトロニクス、自動車部品の高性能化・軽量化に、エンプラは不可欠な素材です。なかでも、グローバルポリアセタール社のポリアミドMXD6をベースレジンとするポリアミド樹脂系成形材料「レニー™」は、卓越した機械的強度・低吸水性により、金属代替材料として高い信頼を得ています。
しかし、この優れた素材の性能を最大限に引き出すには、材料特性を深く理解した成形ノウハウと経験が欠かせません。府中プラは、「レニー™」が市場に登場した1980年代から射出成形を手掛け、40年以上にわたり知見を蓄積してきました。
当社はレニー™の成形加工を熟知する国内屈指のメーカーとして、そのノウハウでお客様の製品開発や課題解決に貢献してきたと自負しております。
本コラムでは、従来グレードの課題を克服する「新規開発グレード」の可能性について解説します。なお、本コラムは技術的な用語・数値の正確性についてグローバルポリアセタール社の監修を受けています。
当社の強み:長年の経験が支えるレニー™成形技術と現場実績
レニー™の成形は、単に樹脂を金型に流し込むだけではありません。最終製品に求められる品質を実現するためには、製品設計から成形、そしてその後のメンテナンスまで、一貫した技術力が求められます。当社では、現場で培ったノウハウを活かし、以下の体制でお客様をサポートしています。
製品設計・金型設計への踏み込んだ提案
お客様の図面をもとに、レニー™の特性を最大限に活かすためのゲート位置や肉厚設定、ウェルドライン対策などを積極的にご提案します。これにより、設計段階での後戻りを防ぎ、開発スピードの向上に貢献します。
成形条件の最適化
樹脂温度、金型温度、射出速度といったパラメーターを微細に調整し、そりやヒケ、寸法精度といった課題を解決します。長年の経験に裏打ちされた「匠の技」とデータに基づいたアプローチで、常に安定した品質の製品を供給します。
安定生産を支える金型メンテナンス
高品質な成形品を継続的に生産するためには、金型の状態管理が欠かせません。当社独自のメンテナンスプログラムにより、金型の長寿命化とトラブルの未然防止を実現しています。
これまでにも、「金属部品からの代替による大幅な軽量化」や「複雑形状部品の一体成形によるコストダウン」など、数々のお客様の課題解決や新規用途開拓に貢献してまいりました。この一貫した技術サポート体制こそが、当社の最大の強みです。
レニー™の特徴と、見えてきた次の課題
ここで改めて、レニー™がなぜ多くの製品で採用されてきたのか、その優れた特性を振り返ってみましょう。
広い温度域で維持される、圧倒的な機械的強度・剛性

レニー™は、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂の中でも最高レベルの強度と弾性率を誇ります。特筆すべきは、その性能が広い温度範囲で安定している点です。高温環境下でも強度低下が少なく、亜鉛ダイカストやアルミダイカストといった金属材料からの代替を可能にします。これにより、製品の大幅な軽量化はもちろん、複雑形状の一体成形によるトータルコストダウンにも大きく貢献します。
高強度と両立する、優れた耐摩耗性

レニー™はギアや軸受け、カムといった摺動部品において、相手材を傷つけにくく、長期にわたり安定した性能を発揮します。特に無給油(グリスレス)環境での使用に強く、製品のメンテナンスフリー化や長寿命化に貢献できる点も大きなメリットです。高い強度を保ちながら優れた摺動特性を併せ持つため、高い信頼性が要求される精密な機構部品で豊富な採用実績があります。
過酷な環境にも耐える、良好な耐薬品性・耐油性

ガソリン、エンジンオイル、グリースといった各種オイル類や、アルカリ、各種有機溶剤に対して高い耐性を持ちます。この特性から、自動車のエンジンルーム周辺や燃料系、冷却水系の部品など、過酷な環境下で使用されるパーツにも安心して採用されています。
精密部品の鍵となる、ポリアミド樹脂随一の低吸水性

一般的なポリアミド樹脂(PA6、PA66)の大きな課題であった「吸水」を大幅に抑制している点が、レニー™の最大の特長の一つです。その吸水率はPA66の半分以下であり、吸水による①寸法変化、②機械的強度の低下、③電気的特性の変化が極めて小さいというメリットをもたらします。この寸法安定性により、精密さが求められるコネクタなどの電子部品や、勘合精度が重要な機構部品において、長期にわたる信頼性を確保します。
これらの優れた特性を持つからこそ、レニー™は様々な分野で不可欠な材料として選ばれ続けているのです。これらの優れた特性を持つ一方で、レニー™の用途が多様化に伴い、アプリケーションによっては「より高いレベルの耐衝撃性」が新たな課題として浮上してきました。例えば、組み立て時の負荷や製品使用中の突発的な衝撃が想定されるスナップフィット機構などにおいては、レニー™が誇る高い剛性を維持しつつ、靭性(タフネス)をさらに向上させることで、より広い条件下での採用が可能になります。この「高剛性」と「高靭性」の両立が、レニー™の可能性をさらに引き出す鍵となっていました。
耐衝撃性改良グレード、その可能性
こうした現場のニーズに応えるべく、グローバルポリアセタール社が開発したのが、耐衝撃性を大幅に改善した新規開発グレード「レニー™1042HL」です。このグレードは、レニー™が本来持つ高強度・高剛性といった長所は維持しつつも、課題とされていた耐衝撃性を克服しています。これにより、これまで採用が難しかった用途への展開が期待されています。

まとめ
レニー™の成形に関するお困りごとや、この新しい耐衝撃性改善グレードにご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。長年の経験を活かし、お客様の製品開発を力強くサポートいたします。
本コラムでご紹介した「レニー™」のさらに詳しい物性データは、グローバルポリアセタール社提供の資料でご確認いただけます。ご希望の方は、下記よりダウンロードしてください。