技術解説

【旭化成×府中プラ】トポロジー最適化で「理想の形状」を「作れる形状」へ

【旭化成×府中プラ】トポロジー最適化で「理想の形状」を「作れる形状」へ

このたび府中プラ株式会社は、旭化成株式会社が展開するオープンイノベーション・プログラム*において、トポロジー最適化を活用した製品設計支援の取り組みのパートナー企業に選定されました。電子電気、機械、流体制御機器、医療機器など多くの分野で、射出成形部品の量産と製造立ち上げを通じて培ってきた当社の成形加工技術、金型製作、材料特性への理解といった実務的な知見をご評価いただいたものと受け止めています。

本コラムでは、トポロジー最適化という新しい設計手法の基礎を、設計者の方が実務で活用できる形で整理します。さらに、最適化の計算結果(理想形状)を「量産できる形状」へ変換するために必要な制約条件や製造要件を明確にし、旭化成のCAE・構造最適化技術と府中プラの量産現場知見を組み合わせることで、どのような価値を実現できるのかをご紹介します。なお、本コラムは技術用語・内容の正確性について旭化成株式会社CAE技術開発部の監修を受けています。

*「Value Co-Creation Table 2025」テーマ-2「より軽く!よりエコに!部品製造の最適化――トポロジー最適化で素早い最適設計+CO₂排出量の見える化」

なぜ今、トポロジー最適化なのか

近年、樹脂部品の設計目的は「軽量化」、「剛性の確保」、「小型化」、「環境配慮(材料使用量の削減やCO₂排出量の低減)」など多岐にわたり、設計要件は非常に複雑になっています。樹脂材料は、材料単体の弾性率や強度といった点では金属に及ばないケースも少なくありませんが、射出成形では形状自由度が高く、リブ配置や肉厚分布といった構造設計によって性能を補える余地が大きいことが特長です。従来の経験則や試行錯誤を繰り返す方法では、最適な構造に到達するまでに時間とコストがかかり、設計の自由度が高い樹脂ほど「どこを肉抜きするか」、「どこにリブを配置するか」といった判断が難しい局面が増えます。

そこで注目されているのが、トポロジー最適化です。MONOistの解説記事[1]でも、設計課題を解決するための有効な手法として位置づけられています。特に旭化成が提案するアプローチは、設計空間に対して荷重・拘束条件などの入力条件(変数)を与え、有限要素法(FEM)を用いた解析・シミュレーションを通じて、材料を残すべき領域と削るべき領域を探索し、最適な材料配置を導くものです[2]。樹脂は金属より形状の自由度を取りやすい一方で、射出成形という製造制約の影響も大きい材料です。だからこそ、最適化で得た構造の意図を保ちながら、量産設計へ落とし込む“橋渡し”が重要になります。

トポロジー最適化とは

トポロジー最適化とは、設計空間の中で「どこに材料を配置し、どこを空洞化(肉抜き)するか」を数学的に求める構造最適化手法です。設計者がCAD上で形状を決めてから解析で確認するのではなく、はじめに設計空間(形状の取り得る範囲)を定義し、目的(たとえば重量最小、変形最小、剛性最大など)と、制約(応力上限、変位上限、体積率、固有振動数、製造制約など)を与え、計算によって最適な構造を探索します。

旭化成の技術紹介[3]にあるように、このプロセスでは、従来は設計者の経験と勘に依存しがちだったリブの配置、肉厚の分布、補強の入れ方を、アルゴリズムと解析モデルが網羅的に検討し、結果を可視化します。設計初期段階で最適化を行うことで、後戻りを減らしながら、性能と軽量化を両立する方向性を早期に固められる点が大きなメリットです。

トポロジー最適化の一般的な実務フロー

トポロジー最適化の実務は、設計初期段階で設計空間を定義し、荷重条件や拘束条件といった前提条件を与えたうえで、最適化計算を行うところから始まります。設計者は、重量最小化や剛性確保などの目的を設定し、解析(CAE)によって材料を配置すべき領域と削減できる領域を導き出します。

このプロセスにより、従来は経験や試行錯誤に頼っていたリブ配置や肉抜きの方向性を、論理的に検討できる点がトポロジー最適化の大きな特徴です。一方で、ここで得られる形状はあくまで解析上の理想解であり、そのまま射出成形で量産できるとは限りません。さらに、実際の射出成形部品ではガラス繊維強化樹脂などの異方性材料が用いられるケースも多く、繊維配向の依存性を十分に考慮しない解析では、実挙動との差が生じる可能性があります。アンダーカットや極端な薄肉、成形収縮や反りを招きやすい形状が含まれることも多く、製造要件を考慮した再設計が不可欠となります。

そのため実務では、最適化結果を基に量産形状へ再構築し、繊維配向の影響も踏まえたCAE解析によって性能を再確認するというプロセスを繰り返します。トポロジー最適化は「計算で答えが出て終わり」の手法ではなく、設計と製造をつなぐ調整工程まで含めて成立する技術だと言えます。

(写真:最適化設計によりリブ配置や肉抜きを検討したペダル部品サンプル(出典:MONOist[4]))

射出成形ならではの制約と「変換」の重要性

トポロジー最適化を成功させる鍵は、解析結果を「作れる形状」に変換するエンジニアリング能力です。樹脂部品の製造では、流動長と圧力損失、ゲート位置と充填バランス、ガスベント、冷却ムラによるヒケ・反り、パーティングライン(PL)設定、抜き勾配、金型構造、さらには寸法安定性や材料の流動挙動といった要素が複雑に絡み合います。最適化ソフトウェアやツールが出力した構造を、これらの制約条件の中で成立させなければ、机上の設計で終わってしまいます。

府中プラが担うのは、単に形状を“丸める”ことではありません。最適化結果が示す荷重伝達や応力の流れ、剛性を確保している要点を読み解き、その意図を保持したまま、金型として成立し、量産で安定する形状へ落とし込むことです。ここで重要なのは、設計目的(軽量化・剛性・強度・コスト・環境)を再確認しながら、製造可能性を上げても性能が落ちないように設計変更をコントロールする点です。

実現できる3つの価値

旭化成の解析技術と、府中プラの成形・金型の知見を組み合わせることで、次の価値を実現します。

(1) 軽量化と剛性・強度確保の両立
荷重経路に沿った合理的な材料配置により、重量を削減しながら必要な剛性・強度を確保する構造を狙えます。最適化結果をそのまま採用するのではなく、量産形状へ再構築した上でCAE解析で性能を確認し、実現可能な最適設計に近づけます。

(2) 部品統合によるコストダウン
複数部品で構成していた機能を、最適化された一体形状として統合できれば、組立工数や部品点数の削減につながります。設計・製造の両面から見た「統合の可能性」を検討し、製品全体のコストと品質のバランスを取りながら提案します。

(3) 開発スピードの短縮と環境配慮
設計初期段階で方向性を固め、手戻りを抑えることで開発期間短縮に寄与します。材料使用量の削減は、そのままCO₂排出量低減(Scope3)に結びつきます。こうしたアプローチは旭化成も提唱しています[5]。

府中プラが提供するご支援

当社は、PA66、PPS、MXD6、半芳香族PA、変性PPEなど、エンプラ・スーパーエンプラの成形実績を豊富に持ち、材料ごとの流動挙動や収縮、反り、寸法変化の傾向を踏まえた量産設計の勘所を蓄積しています。本プログラムでは、解析(CAE)で得た結果を、製造現場の現実に合わせて“量産できる形”に仕上げる、以下の支援を行います。

(1) 成形成立性の検証(DFM):ショート、ヒケ、反りリスクの事前対策

(2) 形状のリ・デザイン:最適化結果をベースに、抜き勾配やゲート位置を考慮した量産形状へ調整

(3) 一貫対応:試作金型から量産立ち上げまで伴走

解析結果という「理想」を、量産という「現実」に変換して実現することが、射出成形メーカーである府中プラの役割です。なお、本プログラムは特定樹脂のみに限定したサービスではなく、設計要件に応じて幅広い材料で検討可能です。ただし材料特性により適否は異なるため、最適化対象材料の選定段階から支援します。

トポロジー最適化の仕組みや解析原理そのものについては、設計者向けの基礎解説記事も公開しています。構造最適化としての位置づけや、一般的な解析フロー、注意点などを整理していますので、本取り組みをより深く理解するための参考情報としてご活用ください。
「トポロジー最適化とは?意味・仕組み・解析手法を基礎から解説」

ご活用を検討中の設計者様へ

トポロジー最適化は、以下のような課題を持つ製品に最適です。

(1) 装置全体の軽量化・省エネ化が至上命題だが、強度は落とせない。

(2) 複雑な荷重条件で、リブ配置や肉抜きに迷っている。

(3) 金属部品の樹脂化(金属代替)において、さらなる性能向上を目指したい。

最適化が適しているかどうかは、製品用途・材料特性・荷重条件などにより大きく異なります。まずはお気軽にご相談ください。

次のような初期検討段階のご相談も、歓迎しております。

  • 自社のこの部品は、トポロジー最適化の対象になりそうでしょうか?
  • 軽量化や剛性の確保、材料削減にどの程度の効果が見込めるでしょうか?
  • 樹脂化や形状見直しを検討しているが、どこから着手すべきか分からない。

図面が固まっていない“構想段階”でのご相談も大歓迎です。
設計要件や現行図面の状況を伺いながら、最適化の適否や期待される方向性をご案内させていただきます。最適化の実施をご判断いただく前の“情報収集段階”としてのご相談も歓迎しております。

>>お問い合わせはコチラから

(写真:トポロジー最適化支援プログラムのキックオフにて(旭化成×府中プラ))


参考文献
[1] MONOist(2025年6月20日)「トポロジー最適化に関する解説記事」
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2506/20/news014_2.html
[2] [3] 旭化成エンプラ総合情報サイト「CAE・構造最適化 技術紹介ページ」
https://www.asahi-kasei-plastics.com/technology/cae01/
[4] MONOist(2025年6月20日)「トポロジー最適化フロー解説」
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2506/20/news014_3.html
[5] MONOist(2025年5月28日)「旭化成:CAE技術と高機能樹脂を活用した設計アプローチ紹介」
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2505/28/news041.html

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