技術解説

コストダウンに行き詰まったら。「ティアダウン」で発見する、もう一段上の設計改善と製品価値の最大化

コストダウンに行き詰まったら。「ティアダウン」で発見する、もう一段上の設計改善と製品価値の最大化

製品開発において、コストと性能、そして品質の最適なバランスを追求することは、企業の競争力を左右する重要な課題です。市場の要求が高度化する一方、価格競争は激しさを増しています。このような環境下で、府中プラは単なる部品サプライヤーではなく、お客様の製品価値を最大化する技術パートナーでありたいと考えています。その想いを形にするのが、府中プラが重視する「VE(Value Engineering)提案」です。VEとは、製品の「価値」を「機能」と「コスト」の関係で捉え、最小のコストで最大の価値を生み出すアプローチです。このVE提案を、より深く、効果的に進める手法として、本コラムでは「ティアダウン」をご紹介します。 

ティアダウンとは 

「ティアダウン(Teardown)」とは、製品を最小単位の部品レベルまで系統的に分解し、各部品の構成、材質、構造、製造方法などを徹底的に分析するリバースエンジニアリング手法の一つです。その目的は、製品のコスト構造や技術的な工夫を解明し、自社製品の改善・最適化に繋がるヒントを発見することにあります。
製品を部品レベルで精査することで、「この部品はもっと簡素化できる」「複数の部品を一つに統合できないか」「この材質はオーバースペックではないか」といった、図面を眺めているだけでは気づきにくい改善の糸口が数多く見つかります。
特に電子機器の業界では、競合製品を分析して優れた設計思想やコスト削減の工夫を学ぶために広く活用されています。ティアダウンは、もはや単なる競合分析ではなく、自社製品の価値を継続的に高めていくための、能動的な改善活動の出発点として位置づけられているのです。 

ティアダウンを活用したVE提案の流れ 

では、このティアダウンという手法を、具体的にどのようにVE提案に繋げていくのでしょうか。当社の技術的な視点に基づいた、そのアプローチの流れをご紹介します。 

Step 1: 分解と詳細分析(現状の徹底理解)

まず、対象となる製品を部品レベルまで分解し、各部品の重量、寸法、材質、接合方法を確認します。さらに、各部品がどのような工法(プレス、切削、射出成形など)で製造されているかを推測します。これは、現状を正確かつ客観的に把握するための最も重要な工程です。 

Step 2: 課題の抽出と機能分析(改善点の探索) 

次に、収集したデータをもとに、各部品が持つ「機能」を分析します。「なぜこの部品が必要か?」、「なぜこの形状か?」、「なぜこの材質か?」という問いを突き詰めることで、機能に対して過剰な品質(オーバースペック)や、非効率な構造が潜んでいないか、課題を浮き彫りにします。 

Step 3: 改善案の立案(新しい価値の創造) 

課題が明確になれば、具体的な改善案を立案します。ここで、府中プラが持つ材料選定や加工技術に関する知見が活かされます。 

部品統合:例えば、複数の板金部品をネジや溶接で組み立てているユニットに着目します。これを樹脂の一体成形品などに置き換えることで、部品点数や組立工数の削減はもちろん、在庫管理の簡素化や締結部の緩みといった品質リスクの低減にも繋がります。 

材質変更:金属から樹脂への変更(金属代替)は、軽量化やコストダウンの代表的な手法です。絶縁性確保や防錆といった目的にも有効で、高機能なエンプラを用いれば、金属に匹敵する強度や耐熱性を実現できるケースもあります。 

形状最適化:応力の集中箇所とそうでない箇所を調べ、不要な部分の肉を抜くことで材料費を削減し、軽量化を図ります。また、組立時に作業者が位置決めしやすいようガイド形状を追加するなど、製造現場の効率を上げるための微細な形状変更も重要な改善点です。 

工法転換:ブロック材から一つひとつ削り出して作られている部品(切削加工)を射出成形に変更する、後加工している金属部品をインサート成形に切り替える、塗装部品を材料着色により無塗装化する等の工法転換を検討します。工法転換は、生産タクトの短縮と加工費の大幅な削減に繋がり、特に量産品において絶大なコストダウン効果を発揮します。 

Step 4: VE提案と効果検証

コスト削減効果や性能向上を予測しながら、最終的に具体的な設計変更案についてお客様と協議します。「この3点の部品を一体化することで、部品コストを10%、組立工数を30%削減可能」といったように、具体的なメリットを可視化するのが理想です。 

材料選定のノウハウ 

VE提案の質を左右する重要な要素が「材料選定」です。府中プラは、特定の材料や工法に縛られず、お客様の製品要求に対して常にフラットな視点で最適なソリューションを提案することを目指しています。
材料選定は、単に材料単価だけで判断するものではありません。「要求性能」、「量産性(加工性)」、「信頼性」、「トータルコスト」といった複数の軸で総合的に評価する必要があります。 
例えば、ある装置の筐体部品で、従来はアルミダイカストが使われていたケースを考えてみましょう。お客様の課題が「さらなる軽量化とコストダウン」であった場合、府中プラはティアダウンを通じて、ガラス繊維などで強化したエンプラへの置換(金属代替)を提案します。 
これにより、アルミダイカストに比べて大幅な軽量化が期待でき、量産時の材料費や二次加工費を抑制できます。また、樹脂化によって設計の自由度が高まり、金属では一体成形が難しかった複雑な形状も実現可能になるなど、新たな付加価値を生む可能性も秘めています。 

部品形状・構造に関するノウハウ 

材料選定と車の両輪をなすのが、「部品形状・構造」の最適化です。ミリ単位の形状見直しが、製品全体の品質やコストに劇的な影響を与えることも少なくありません。ティアダウンによる詳細な分析は、こうした微細な設計の意図や課題を浮き彫りにする、高精度の「拡大鏡」の役割を果たします。
府中プラは、CAE解析などのシミュレーション技術を駆使し、設計の合理化・最適化をお手伝いいたします。例えば、樹脂成形部品で発生しがちな「ヒケ」や「ソリ」といった品質課題。これは、肉厚の不均一さや樹脂の流れを阻害する形状が原因であることが多くなっています。流動解析によって原因を特定し、肉厚の均一化やリブ形状の最適化などを提案することで、品質の安定と歩留まりの改善が可能になります。 
また、複数の部品で構成されたユニットを、一体成形することも有効なアプローチです。部品点数と組立工数の大幅な削減は、直接的なコストダウンに繋がります。 
このように、実物の詳細な観察とデジタル技術を組み合わせることで、現実的で効果の高い形状・構造の最適化提案を行います。 

まとめ 

グローバルな競争と環境意識の高まりは、ものづくりに「より安く、より高性能」であると同時に、「サステナビリティ」への貢献を求めます。これらの高度な要求に応えるには、既存設計の延長線上にある改善だけでは不十分です。製品の成り立ちを根本から見直し、ゼロベースで最適な姿を追求するVEのアプローチは、今後ますます重要になるでしょう。ティアダウンは、その思考を始めるための客観的な羅針盤となります。 

府中プラは、お客様の課題を深く理解し、共に考え、解決策を導き出す技術パートナーでありたいと願っています。ティアダウンという技術的な視点からお客様の製品を分析し、材料や工法に関する知見を駆使して、お客様自身も気づいていない改善の可能性を発見し、ご提案すること。それが府中プラの使命です。
「現行製品のコストを抜本的に見直したい」 
「競合に打ち勝つ、新しい価値を持つ製品を開発したい」 
「品質を維持、向上させながら、軽量化や環境対応を実現したい」
もし、皆様がこのような課題をお持ちでしたら、ぜひ一度、府中プラにご相談ください。お客様の大切な製品を、その価値を最大化するという共通のゴールに向かって、共に考えさせていただければ幸いです。皆様からのお問い合わせを、心よりお待ちしております。

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