技術解説

油圧式・電動式・ハイブリッド式とは? 射出成形機の違いと製品品質やコストへの影響 

油圧式・電動式・ハイブリッド式とは? 射出成形機の違いと製品品質やコストへの影響 

射出成形部品の調達において、価格や品質、納期に影響する要素は多岐にわたります。その中でも、成形メーカーが使用する「射出成形機」の種類は、製品の仕上がりを左右する重要な要素です。 
実は、成形機には異なる駆動方式があり、それぞれに得意・不得意が存在します。当社、府中プラがなぜ「電動式」と「ハイブリッド式」の成形機を主力設備として選択しているのか。それは、お客様に高品質な製品を、最適なコストで、安定的にご提供したいという想いがあるからです。本コラムでは、現在主流の「油圧式」「電動式」「ハイブリッド式」の違いを整理し、それぞれの方式が製品やコストにどう関わるのか、そして当社の設備選定の意図を解説します。 

射出成形機の3つの駆動方式とは? 

射出成形は、金型を締め、溶かしたプラスチックを射出し、冷やし固めて取り出す、という工程の繰り返しです。この一連の動作をどのような力で動かすか、その「駆動方式」によって、成形機は大きく3つに分類されます。 

油圧式 射出成形機油圧

ポンプで発生させた作動油の力を利用して動作する、最も伝統的なタイプの成形機です。大きな力を出せるのが特徴で、古くから射出成形の現場を支えてきました。 

電動式 射出成形機 

各動作を、それぞれ独立したACサーボモーターで駆動する方式です。コンピューターによる精密制御で、高い精度と再現性を実現します。省エネ性能やクリーン性にも優れ、近年の主流となっています。 

ハイブリッド式 射出成形機

 その名の通り、油圧と電動の長所を組み合わせた方式です。パワーが必要な工程に油圧を、精度が求められる工程に電動を用いるなど、両者の「いいとこ取り」を実現した合理的な成形機です。 

油圧式射出成形機の特徴と現代における課題 

まず、伝統的な油圧式成形機について解説します。当社では保有していませんが、その特性を理解することは、他の方式の優位性を知る上で重要です。
油圧式の最大の強みは、大きな力を容易に得られる点にあり、自動車のバンパーのような大型・肉厚製品の成形を得意としています。構造が比較的シンプルなため、設備導入コストが安いというメリットもあります。
しかし、現代のモノづくりにおいて、油圧式はいくつかの課題を抱えています。一つはランニングコストです。油圧ポンプを常に稼働させる必要があるため電力消費が大きく、近年の電気料金高騰は製造コストを直撃します。また、作動油の温度変化が成形品質に影響を与えやすく、電動式ほどの高い再現性を維持するには、熟練の技術が求められます。
さらに、油漏れによる工場内の汚染リスクは避けられず、クリーンな環境が求められる製品には不向きです。これらのコスト、品質の安定性、環境負荷といった課題を考慮し、当社では後述する電動式とハイブリッド式を最適なソリューションとして選択しています。 

電動式射出成形機:当社の高精度成形を支える主力 

次に、当社が精密部品の生産で主力とする、電動式射出成形機です。府中プラが高品質な成形品をお届けできる理由が、ここにあります。 











当社の50トンの電動式成形機
NEX50Ⅲ-5EG 

高精度・省エネルギー・クリーンな成形環境 

電動式の最大の強みは、サーボモーターによる卓越した「制御精度」と「再現性」です。ミクロン単位の精密な動作を、ショットごとに極めて正確に繰り返すことができます。これにより品質のバラつきが劇的に抑えられ、不良率の低い安定した生産が可能です。
この安定性は、お客様にとって「いつでも同じ品質の製品が手に入る」という安心感に繋がります。特に、精密成形部品や医療機器の部品など、わずかな寸法誤差も許されない製品において、電動式成形機は不可欠な存在です。
また、「省エネルギー性能」も特筆すべき点です。必要な時にだけモーターを駆動するため、油圧式に比べて消費電力を50%以上削減できるケースも珍しくありません。このランニングコストの削減は、お客様にご提示する製品単価の競争力に直接貢献します。
さらに、作動油を使わないため油漏れがなく、工場環境は常にクリーン。作動音も静かで、環境負荷の低減にも繋がります。このクリーンな環境は、高い清浄度が求められる医療用部品や食品容器の成形に最適です。 

設備コストとトータルコストの考え方 

電動式成形機は、高性能なモーターや制御装置を搭載するため、設備導入コストは高価です。しかし、当社ではこれを単なるコストとは捉えていません。
初期投資は高くとも、 

  • ランニングコスト(電気代)の大幅な削減 
  • 高い品質安定性による不良率の低減(歩留まり向上) 
  • サイクルタイム短縮による生産性の向上 

これらのメリットが、製造原価を大きく引き下げます。長期的な視点で見れば、トータルコストはむしろ低減され、そのメリットをお客様に還元できると考えています。だからこそ、府中プラは品質とコスト競争力のために、電動式成形機への戦略的投資を続けているのです。 

ハイブリッド式射出成形機:パワーと精度を両立する万能選手 

「大きな製品も作りたいが、精度も妥協したくない」。そんなニーズに応えるのが、当社のもう一つの主力、ハイブリッド式射出成形機です。 











当社の220トンのハイブリッド式成形機
NEX220Ⅳ-71E 

油圧と電動の利点を組み合わせた合理的な構造 

ハイブリッド式は、「パワーの油圧」と「精度の電動」を巧みに使い分けることで、両者のメリットを両立させています。
例えば、当社が採用する一般的なハイブリッド機では、製品品質に直結する射出・計量の工程に電動サーボモーターを採用し、電動式に匹敵する精密な成形を実現します。一方で、金型をがっちり閉じる型締め工程には油圧機構を用いることで、大きな力を効率よく確保しています。 

パワーと精度の両立による適用範囲の広さ 

この構造により、ハイブリッド式は、かつて油圧式が得意としてきた中〜大型の製品領域においても、高い品質とコスト競争力を発揮します。自動車の機能部品やOA機器の筐体など、「ある程度の大きさが必要だが、高い寸法精度や美しい外観も求められる」といった製品に最適です。
当社では、このハイブリッド式をラインナップに加えることで、油圧式を保有せずとも、小型の精密部品から中型の機能部品まで、お客様の幅広いニーズに高いレベルでお応えできる体制を整えています。油圧式の課題であった省エネ性能も大幅に改善されており、コストと品質、性能のバランスが非常に良い、まさに万能選手と言える設備です。 

まとめ:最適な設備選定が、お客様の利益に繋がる 

これまで見てきたように、射出成形機にはそれぞれ異なる特徴があります。 

  • 油圧式:パワーはあるが、ランニングコストや品質安定性、環境面に課題。 
  • 電動式:高精度・省エネ・クリーン。精密部品に最適で、トータルコストに優れる。 
  • ハイブリッド式:パワーと精度を両立。幅広い製品に高品質で対応可能。 

製品の要求仕様と成形機の特性がミスマッチを起こせば、品質の低下やコストの上昇は避けられません。精密部品を旧式の油圧機で成形すれば、品質は安定しないでしょう。逆に、クリーン度が求められる製品を油圧機で成形することは、汚染リスクを伴います。
だからこそ、成形メーカーがどのような思想で設備を選定しているかが重要になるのです。 

当社、府中プラが電動式とハイブリッド式を主力として揃えている理由。それは、現代のモノづくりに求められる「高精度」、「高品質」、「コスト競争力」、「環境配慮」という、お客様のあらゆるニーズに応えるための、必然の選択です。当社の設備構成は、お客様の製品に最適な製造環境をご提供し、品質の安定、コストの最適化、そして信頼性の高い製品供給という形で、お客様の事業に貢献するためのものです。
射出成形に関するお困りごとや、より高品質・低コストな部品調達をご検討の際は、ぜひ当社の設備力と技術力にご期待ください。お客様の製品に最適なソリューションをご提案いたします。 

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