その他物性評価
部品機構(ヒンジ・スナップ・ギア・ローラーなど機構部品に求められる樹脂設計の要点)

本ページは、当社サイトの射出成形技術解説コンテンツのうち、「部品機構」に関する記事をまとめたカテゴリページです。
本カテゴリでは、射出成形で用いられる機構部品(ヒンジ、スナップフィット、ローラー、ギア、プーリー、チェーンリンク、クランプ構造、継手・バルブなど)の設計・材料選定の考え方を整理しています。対象読者は、電気電子、機械、産業機器メーカー等の設計、調達、品質管理、製造部門の方々です。樹脂製の機構部品は、設計自由度の高さや軽量性といったメリットがある一方で、金属とは異なる破壊メカニズムや変形挙動を持つため、樹脂特有の設計知識が不可欠です。
1. 材料単体の物性評価
材料選定の基礎となるのは、材料単体の物性データです。しかし、物性表には以下の点が反映されないことも多く、実務では注意が必要です。
- 試験片形状(引張・曲げが“標準試験片”で測定されていること)
- 成形品とは異なる流動配向・冷却条件
- ガラス繊維配向による異方性
- 温度・湿度・経時変化の影響
本カテゴリでは、材料データシートの“読み解き方”から、引張強度・弾性率・衝撃値・耐熱性・透明性など主要物性の理解を深めるための基礎情報を網羅します。
2. 成形品としての性能評価(形状・成形条件による性能変動)
樹脂は金属と異なり、成形条件や形状によって性能が大きく変動します。
代表的な評価項目は以下の通りです。
- 摺動性・摩耗
材料特性(POM、PA、PPSなど)と表面粗さ、荷重・速度(PV値)が寿命に直接影響。 - 耐加水分解性
PBT・PC・ナイロンなどは高温高湿環境で劣化が進行。流体機器や高湿度環境で重要。 - 耐薬品性
部品の応力状態 × 使用薬品により割れや膨潤が発生。材料選定と応力設計の両方が必要。 - 寸法安定性
半結晶性樹脂の収縮挙動、吸水による寸法変化、金型冷却ムラなどが影響。 - 透明性・光学特性(PC・PMMA・PES・PPSU)
射出条件や金型表面によってヘイズ・複屈折が変化。医療・光学用途で重要。
このように、材料自体の性能だけでなく、部品形状や成形工程によって特性が変わるため、両方の視点で評価する必要があります。
3. 材料物性 × 部品評価 × 使用環境の三位一体の理解が重要
部品としての性能は
「材料物性」×「部品設計」×「環境条件」×「成形品質」
の掛け合わせで決まります。
例:
- POMは摩耗性に優れるが、応力集中があると脆性破壊する
- PAは強度が高いが吸水で寸法と強度が変化する
- PCは高靭性だがアルカリ洗剤で応力割れを起こす
- PPE系は寸法安定性に優れるが、金型構造の影響を強く受ける
本カテゴリでは、各物性テーマを単独ではなく“部品としての性能”と関連付けて理解できるように構成しています。
4. 本カテゴリで扱う主なテーマ
- 材料物性の基礎(強度・剛性・耐熱・透明性など)
- 材料データシートの読み解き
- 摺動性・摩耗とPV値の考え方
- 耐加水分解性・耐薬品性など環境劣化
- 射出条件と光学特性(透明樹脂の評価)
- 寸法安定性と異方性
- 部品としての寿命・破壊挙動の理解
その他物性評価カテゴリでは、材料単体の物性と成形後の部品としての性能を横断的に扱い、用途に応じた最適な材料・形状・評価視点を提供します。材料と部品評価を分断せず、総合的に理解することで、射出成形部品の品質・寿命・信頼性をより正確に把握することができます。
本カテゴリに関連する詳しい技術解説は、以下のコラムをご覧ください。