成形実績一覧

変性PPE(mPPE)とは

変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)は、2-6キシレノールの重合によって得られるPPEをベースに他のポリマーや添加剤を混合して性能を向上させた非晶性のエンプラです。

PPEは材料単体として耐熱性に優れるものの、流動性が低く成形加工が容易ではないため、 PS、PA、PPでアロイ化します。最も流通しているのは完全相溶系ブレンドであるPPO/PSです。このブレンド比を変えることにより幅広い耐熱性、物性を持たせることができ、難燃グレードも含めて製品ラインナップが充実しています。

1960年代初頭に商業生産が開始された歴史のあるエンプラですが、近年においても新しいグレードが開発されており、その活用範囲はなお広がっています。

1. 優れた耐熱性
PPE単体の転移温度(Tg)は210°Cと非常に耐熱性が高いのが特徴です。ブレンドするポリマーの比率によって様々な耐熱れベルのグレードが生産されています。熱変形温度(HDT)も高く、電気・電子部品や自動車部品など、過酷な高温環境下で使用される製品に適しています。

2. 優れた機械的特性
引張強度、曲げ強度、剛性に優れています。PSやPAなど、他のポリマーとのブレンドにより、靭性や耐衝撃性が向上しています。これにより、荷重がかかる部品や高い耐久性が求められる用途で使用されています。

3.低吸水性、寸法安定性
PPEは吸湿性が低いため、湿度や温度変化による寸法変化が少なく、寸法安定性に優れています。この特性は、特に寸法精度が要求される精密成形品において効果を発揮します。

4. 優れた耐薬品性、耐加水分解性
酸、アルカリ、油脂類に対して優れた耐性を持ちます。この特性により、化学薬品や工業用流体に触れる部品で多用されています。また、耐加水分解性も良好で、湿潤環境でも性能を維持することから水回り用途はもとより、湿度の高い環境で使用される機器の品質信頼性を大幅に高めます。

5. 優れた電気的特性
PPEの基本特性である高い絶縁性と低誘電率は、変性PPEにも引き継がれています。これにより、電子部品や通信機器、電力機器の絶縁材料として多く採用されています。特に、温度や湿度の影響を受けにくい安定した電気特性を持つ点が評価されています。

変性PPE(mPPE)を推奨する用途・ニーズ

01 水回り機器

水回り機器

液体移送に使用される材料では、耐加水分解性が重要になります。変性PPEは、エンプラの中では最も低い吸水率を有しています。これらの特性から、高湿度環境や水に接触する用途でも、その特性と寸法安定性を維持します。ポンプ、インペラー、マニホールド・ブロック、水道メーターといった水機器関連用途で長期にわたる使用実績があるのは、こうした理由によります。

02 電気機器ハウジング

電気機器ハウジング

変性PPEは、高い寸法安定性、高温環境下での優れたクリープ特性、および低い吸水性という特徴があることから、電気機器製品への応用が可能です。変性PPEの難燃グレードは、非臭素系および非塩素系材料の要求される製品での使用に適しています。

電気機器のハウジングにはABS、PC/ABSが採用されることが多くなっていますが、それらの材料にはない耐加水分解性と低比重を備えた変性PPEを使用することでお客様の製品の差別化が可能です。

03 透明性、フードコンタクト

透明性、フードコンタクト

mPPEと言えば、従来は不透明色のペレット生産に限られていましたが、技術革新によって透明性のあるグレード開発が進行しています。

透明性、耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性を同時に要求される用途では、これまでPESやPSUが使われてきましたが、コストが大きな課題となっていました。透明mPPEには、こうした部品に対して従来のようなコストをかけずに製品設計ができる可能性が秘められています。BPA不使用、FDA適合という特徴は食品に接触する機器、用途に対してもフィットします。

スーパーエンプラはコスト的に採用が難しい、とは言え、PCでは要求性能を満たせない、という用途に対して、当社では透明mPPEを提案しています。

当社の変性PPE(mPPE)成形における強み

01 金型デザインに関するノウハウ

金型デザインに関するノウハウ

変性PPEは、特にその難燃グレードで成形時のガス発生が多く、成形業者にとって楽な材料ではありません。図面の寸法公差や幾何公差を満足できる金型構成とゲート配置を提案致します。本材料は流動性が低く、高温での成形が避けられないことから金型設計においてはベントデザインも重要です。

当社では、流動末端部、深いリブ、薄肉部等の充填が妨げられやすい部位にベント設置を行い、低い射出圧力で成形できるようにしています。また、他の材料よりも流動性が低い分、金型キャビティまでの成形材料の流路の形の大きさや位置も最適化しています。

02 最適な成形条件の設定と金型メンテナンス

最適な成形条件の設定と金型メンテナンス

変性PPEは、材料メーカーの推奨条件だけに頼らず、部品形状に応じて金型温度を調節するノウハウを有しています。高外観を要求される部品の場合、高速の充填が必要となるのが一般ですが、金型温度をやや上げて射出速度を低めに設定します。本材料はMXD6やPPSと比較してヒケが出やすい傾向がありますが、当社では金型温度を最適化してヒケを制御することが可能です。

金型メンテナンスに関しては、各部品の形状や製品重量に応じて暫定的に設定したメンテナンス頻度で開始し、実際のガスの付着状況を確認しながら適宜メンテナンス頻度を変更しています。また、必要に応じてベントを追加することで、より高品質かつ安定した成形を実現しています。当社では成形ショット数をITシステムでカウントしており、各金型ごとに分解、洗浄するタイミングを逃さず適切はメンテナンスを行っています。

変性PPE(mPPE)の成形実績