成形実績一覧

PC(ポリカーボネート)とは

PC(ポリカーボネート)は、耐衝撃性、透明性、耐熱性に優れた非晶性樹脂であり、エンプラの中で最も生産量が多く、自動車、電気・電子、建材、医療機器など多岐にわたります。ビスフェノールAと二塩化カルボニルを塩化メチル溶媒中で合成する界面重合法が主流の製法となっており、分子構造に含まれるカーボネート結合により特徴的な物性を生み出しています。

一方、強アルカリや芳香族炭化水素などへの耐性が低く、ソルベントクラックやストレスクラックが起こりやすい性質もあるため、材料の選定には注意を要します。

PC系の材料は、PC単体に加え、ABSやPBT等その他ポリマーとのアロイ材、特殊なモノマーとの共重合材まで含めると膨大な数にのぼり、5大エンプラのなかでもひときわ大きな存在感を示しています。

1. 優れた耐衝撃性
熱可塑性樹脂のなかで最高レベルの耐衝撃性を有し、衝撃強度が重視される用途に適しています。例えば、自動車のヘッドライト、ヘルメット、スマートフォンのカバーなど、衝撃を受ける可能性が高い製品に使用されています。

2. 透明性と光学特性
高い透明性を持ち、光透過率は約89~92%とガラスに匹敵します。このため、ガラス代替材料として利用されるほか、光学製品(レンズ、CD・DVD、ライトカバーなど)やディスプレイの部品としても活用されています。また、PCは紫外線を吸収する特性を持ち、UVカット加工を施せば屋外用途にも適しています。

3. 優れた耐熱性
ガラス転移温度(Tg)が約150°Cと高く、耐熱性に優れています。これにより、高温環境下でも寸法安定性を保ち、電気・電子部品や自動車の内部部品、オーブンの部品などの用途で使用されます。

4. 機械的強度と寸法安定性
引張強度や曲げ強度に優れ、高い剛性を持ちながら、変形や寸法の狂いが少ない点が特徴です。これにより、精密機器や工業用部品の材料としても信頼性が高いです。

5. 耐候性と耐薬品性
適度な耐候性を持ち、屋外環境でも使用できますが、長期間の紫外線や高温多湿環境には劣化する場合があります。これを補うため、UV安定剤や表面処理が施されたグレードも存在します。一方、酸やアルカリ、有機溶剤には弱い傾向があり、特定の化学環境では耐性に注意が必要です。

PC(ポリカーボネート)を推奨する用途・ニーズ

01 高寸法部品

高寸法部品

PCは、非晶性樹脂ならではの寸法安定性を始め、耐熱性、難燃性、電気的特性でバランスのよい物性を有しており、家電、精密機械、機械部品、重電の幅広い業界で採用実績があります。ハウジング用途については、一般グレードの他に強化グレード、アロイグレード、共重合グレードによって部品性能、製品性能を向上させることが可能です。

ロットサイズの大きな部品も当社にお任せ下さい。

02 医療機器

医療機器

医療機器用途では部品の内部の視認性を確保する目的から透明性が要求される部品が多数存在します。オートクレーブ滅菌、EOG滅菌、電子線滅菌の耐性に優れる様々な透明グレードが材料メーカー各社で生産されています。従来はサルフォン系の材料やPEIといったスーパーエンプラが使われることの多かった分野ですが、コスト削減のニーズも高まっており、用途によってはPC系の材料が採用される事例が増えてきました。

また、不透明の部品においても、医療機関で使用される各種薬剤への耐性がある共重合材、アロイ材が積極的に開発されています。当社ではお客様の要求特性と許容コストに応じて最適な材料を提案させて頂きます。

03 低温衝撃性

低温衝撃性

PCは、卓越した衝撃強度を有する材料ですが、低温環境下ではポリマーが硬くなり、脆性が増します。これにより衝撃に対して破断しやすくなることが課題となっていました。こうしたPCの弱点を改善したのが共重合PCです。

低温延性衝撃特性の大幅な改善により、冷蔵冷凍設備、低温保存が必要な医療器具や輸送容器、寒冷地に晒される各種製品の設計で信頼性、耐久性を向上させることが期待できます。当社ではこうした製品分野のソリューションを提供致します。

当社のPC(ポリカーボネート)成形における強み

01 用途に応じた材質選定

用途に応じた材質選定

PCは製造メーカーが多いことに加え、PC単体に始まり、PC/ABS、PC/ASA、PC/PBTといったアロイ材、特殊なモノマーとの共重合材まで膨大なグレード数があり、お客様において各部品にどのグレードが適しているかを調べることは非常に負荷のかかる作業です。また、それらの材料を使うことによる製品性能の向上、生産プロセスの改善を展開していくことも限られた業務時間のなかでは容易なことではありません。

当社では長年の材料選定のノウハウと材料メーカーとの太いパイプを活用し、お客様にユニークなVE提案をさせて頂きます。

02 高寸法部品の製品デザイン、金型デザインに関するノウハウ

高寸法部品の製品デザイン、金型デザインに関するノウハウ

当社では、PCにおいても高流動グレードや各種アロイ材を採用し、薄肉製品から複雑形状製品等の実績があります。特に複雑形状の高寸法部品においては、ガスによる不具合を抑制する製品・ゲートデザインをご提案することで安定的な品質を確保しています。

例えば、製品の中間部に一部極端な薄肉形状があれば、その近くにゲートを設置する、あるいはその箇所を入れ子にしたベント設置、もしくは押し出しピン設置によるベント効果の付与することで、厚肉部やゲート周辺への極端な応力集中を避けるよう提案させて頂いています。金型については、流動性が良好とはいえないPCの場合、各合わせ面を少し弱く当てることにより、ベント効果を出し、量産性を向上させる工夫をしています。

当社の金属代替の歴史は1970年代まで遡ります。当時は、PPSの商業生産がまだスタートしておらず、MXD6とならんでPCの強化グレードが代表的な材料でした。大手電動工具メーカーのアルミ製ハウジングを樹脂化した製品は業界内で注目を集めました。量産立ち上げの過程で培った残留応力対策(金型のエッジ部のR形状化、金型温度調整、アニール工程)は、ハウジング用途に限らず、高寸法部品においても当社における重要なノウハウとなっています。

PC(ポリカーボネート)の成形実績