成形実績一覧

PVDFとは

PVDF(ポリフッ化ビニリデン)は、結晶性のフッ素系スーパーエンプラであり、優れた耐薬品性、耐熱性、耐UV性、機械的強度、電気的特性を兼ね備えた高性能材料です。特に、耐薬品性と耐候性に優れ、半導体製造装置、化学プラント、電気・電子部品、医療機器などの分野で広く使用されています。

PVDFは、フッ素樹脂の中では比較的成形性が良好であり、射出成形や押出成形が可能です。また、耐熱性にも優れ、融点は約170~177℃、連続使用温度は120~150℃に達します。これにより、高温環境下での耐久性が求められる用途に適しています。

一方で、PVDFはPFAS(パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質)規制の対象となる可能性があり、特に欧州のREACH規制において制限が進んでいます。そのため、代替材料の選定や用途ごとのリスク評価が重要となります。代替候補としては、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などが挙げられますが、耐薬品性や機械的特性が異なるため、用途ごとの慎重な選定が必要です。

1. 優れた耐薬品性
PVDFは、酸、アルカリ、有機溶剤、塩素化合物などに対して極めて高い耐性を持ちます。特に、強酸や強アルカリ、溶剤に長期間曝される環境下でも劣化しにくく、化学プラントの配管・バルブ、半導体製造装置の部品として広く利用されています。PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ほどの耐薬品性はありませんが、成形加工性に優れるため、射出成形を必要とする用途にはPVDFが適しています。

2. 耐熱性と耐候性
PVDFは、170~177℃の融点を持ち、連続使用温度は120~150℃に達します。また、紫外線や放射線に対しても高い耐性を持ち、屋外用途や過酷な環境での長期使用に適しています。そのため、電線被覆、太陽光発電パネルのバックシート、航空宇宙分野の保護フィルムなどの用途に採用されています。ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン)はPVDFと同様に耐薬品性・耐候性に優れていますが、機械的強度はPVDFが上回ります。

3. 機械的強度と耐摩耗性
PVDFは、引張強度、耐摩耗性、衝撃強度に優れており、機械的負荷がかかる用途にも適しています。特に、高い剛性と耐摩耗性を生かして、ポンプやバルブのシール材、摺動部品などに使用されています。PPS(ポリフェニレンサルファイド)と比較すると、PVDFは耐薬品性に優れるものの、耐熱性ではPPSのほうが高く、用途によって使い分けが必要です。

4. 低吸水性と優れた電気特性
PVDFは、吸水率が低く、湿度や水分の影響を受けにくいため、寸法安定性に優れています。また、誘電率が低く、高い絶縁性を持つことから、電子機器や高周波用途の部品にも適用されています。PTFEやETFEと比較すると、PVDFは高い誘電率を持ちますが、機械的強度が優れているため、電気機器の保護カバーや断熱部品に適しています。

5. 成形加工性と課題
PVDFは、フッ素樹脂の中では比較的成形加工性が良好であり、射出成形や押出成形が可能です。ただし、高い融点と結晶性のため、成形時の温度管理が重要となります。また、熱分解温度が比較的低く、成形時の過熱には注意が必要です。PTFEと比較して成形しやすいものの、ETFEほどの流動性はないため、成形条件の最適化が求められます。

PVDFを推奨する用途・ニーズ

01 ケミカルポンプ

ケミカルポンプ

PVDFは、優れた耐薬品性と耐熱性を兼ね備えたスーパーエンプラであり、ケミカルポンプの構成部品に最適な材料です。特に、酸、アルカリ、有機溶剤など幅広い化学薬品に対して高い耐性を持ち、過酷な薬液環境でも長期間の安定した運用が可能です。また、PVDFは、

耐摩耗性にも優れており、流体の流れによる劣化や摩耗を最小限に抑えることができます。

さらに、PVDFは、低吸水性を持ち、湿度や温度変化による寸法変化が少ないため、ケミカルポンプのシール部やインペラなどの精密部品にも適しています。当社では、PVDFの特性を最大限に活かすための精密射出成形技術と金型設計のノウハウを蓄積しており、耐薬品性が求められるポンプ部品の精密成形に対応可能です。流体制御機器メーカー向けの受注実績も豊富で、長寿命かつ高性能なポンプ部品の安定供給を実現しています。

02 ケミカルバルブ

ケミカルバルブ

PVDFは、耐薬品性、耐熱性、耐摩耗性に優れており、ケミカルバルブの主要材料として幅広く採用されています。特に、強酸・強アルカリ、溶剤系薬品に対する耐性が高く、薬液の流路部品として長期間の使用に耐える安定した性能を発揮します。また、耐候性にも優れているため、屋外環境や温度変化の激しい場所でも性能を維持できます。

ケミカルバルブでは、高精度なシール性が求められますが、PVDFは低吸水性かつ高い寸法安定性を持ち、シートやダイアフラム、ボールバルブなどの部品の変形を抑え、安定したシール性能を維持します。当社では、バルブ部品の高精度成形に適した射出成形プロセスを確立しており、精密加工が必要なバルブにも対応可能です。また、大ロット生産にも対応し、品質管理体制のもとで高精度な部品を安定供給しています。

当社のPVDF成形における強み

01 最適な成形条件の設定

最適な成形条件の設定

当社は、PVDF成形において最適な成形条件の設定に強みを持っています。PVDFは、吸湿性が高く、成形中の水分含量が重要な要素です。水分含量を0.1%以下に抑えることで、成形部品の品質を安定させます。乾燥条件を厳密に管理し、シリンダー温度を320~340℃、金型温度を80~135℃に設定します。射出速度は中速から高速で行い、充填時間や保圧時間も部品の肉厚やゲートの寸法に応じて最適化します。

また、成形機のメンテナンスも重要視し、シリンダーとスクリュー間のクリアランスを定期的にチェックし、成形機メーカーの仕様を満たすように管理しています。これにより、成形部品の品質を維持し、顧客のニーズに応じた高品質な製品を提供します。

02 製品デザイン、金型デザインに関するノウハウ

製品デザイン、金型デザインに関するノウハウ

当社は、PVDFの特性を考慮した製品デザインと金型デザインに関するノウハウを活かしています。PVDFは高温環境下での強度や剛性が求められるため、部品の形状設計においてもこれらの特性を最大限に引き出すことが重要です。高精度な金型設計により、PVDFの成形を効率的に行い、複雑な形状の成形にも対応可能です。さらに、ランナー設計やゲート位置の最適化を通じて、成形効率を向上させ、製品の品質を高めています。

これらの技術力を活かし、PVDF成形における顧客のニーズに応じた高品質な製品を提供し続けています。

PVDFの成形実績