TPXとは
TPX(ポリメチルペンテン)は、 ポリオレフィン系の透明樹脂であり、主成分である4-メチルペンテン-1を重合することで得られます。この材料は結晶性樹脂でありながら、高い透明性を有している点が特長です。通常、結晶性ポリマーは光の散乱が起こりやすく透明性に劣る傾向がありますが、TPXは結晶構造の制御と分子配列の均一性によって、アクリル(PMMA)やポリカーボネート(PC)に匹敵する光線透過率を実現しています。特に、紫外線透過性に優れているため、医療分野や理化学機器、光学分析用セルとしての用途に適しています。さらに、密度が0.83 g/cm³と極めて低く、PC(1.2 g/cm³)と比較して軽量であることから、食品容器や使い捨ての実験器具にも使用されており、耐熱性や耐薬品性が求められる環境で広く活用されています。
1.優れた透明性と軽量性
TPXは、結晶性樹脂の中で特に透明度が高く、アクリルやPCに匹敵する光線透過率を持っています。PCと比較した場合、TPXは紫外線透過性が高く、光学用途にも適しています。また、密度が低いため、製品の軽量化を実現でき、輸送コストの削減や持ち運びの利便性を向上させます。PCは耐衝撃性に優れていますが、重量面ではTPXの方が有利です。そのため、軽量化が求められる医療機器や食品包装材においてTPXが選ばれるケースが増えています。
2.高い耐熱性と耐蒸気滅菌性
TPXの融点は220~240℃と高く、PCと同様に耐熱性に優れた材料です。特に、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)処理に耐えられるため、医療機器や実験用器具として適しています。PCもオートクレーブに対応可能なグレードがありますが、長期間の繰り返し滅菌では加水分解のリスクがあり、耐久性の面でTPXが有利です。そのため、滅菌処理を頻繁に行う医療・研究機関向けの製品にはTPXが選ばれることが多く、試験管、ピペットチップ、バイアルなどの用途で使用されています。また、電子レンジ対応の食品容器にも適用されており、高温下での安全な使用が可能です。
3.優れた耐薬品性
TPXは、安定したC-C結合を持つポリオレフィン系樹脂であり、酸やアルカリ、アルコールに対する優れた耐性を示します。PCは酸やアルカリによる劣化が起こりやすく、アルコールによるストレスクラック(表面の微細なひび割れ)が発生しやすいのに対し、TPXはこれらの影響を受けにくいため、化学薬品と接触する環境でも使用可能です。そのため、化粧品容器や薬液の保存容器、実験用分析セルなど、耐薬品性が求められる用途で広く採用されています。
4.離型性と摺動性の高さ
TPXは、表面張力が低く、フッ素樹脂に次いで優れた離型性を持っています。そのため、各種成形品の離型材料や、離型フィルムとしての用途に適しています。PCは一般的に成形時の粘着性が高く、金型への離型性が低い傾向がありますが、TPXは成形後の剥離が容易であり、製造プロセスの効率化に寄与します。また、摺動特性にも優れており、滑り性が求められる機械部品や食品加工機器の可動部品としても利用されています。
5.低誘電特性とガス透過性
TPXは非極性の構造を持ち、低誘電率を示すため、電気的な絶縁性に優れています。この点ではPCと比較しても安定した絶縁特性を持ち、高周波用途の電子部品や通信機器の絶縁材として活用されています。また、分子構造上、他の樹脂よりもガスを透過しやすい特性を持つため、ガス透過性を利用したフィルターやガス分離膜としても使用されています。
6.食品衛生性と安全性
TPXは、食品衛生法、FDA規格、EC指令などの各種規格に適合しており、安全性が求められる食品包装材や食器、調理器具の用途に適しています。PCも食品用途に使用されることがありますが、近年では代替材料としてTPXが選ばれるケースが増えています。特に、透明性と耐熱性を兼ね備えた哺乳瓶、食品保存容器、調理器具の蓋などの用途では、TPXの採用が進んでいます。
TPXを推奨する用途・ニーズ
01 医療・理化学機器

TPXは、優れた耐熱性、耐薬品性、透明性を兼ね備えており、医療・理化学機器分野での使用に適しています。特に、オートクレーブ(高温高圧蒸気滅菌)やEOG(エチレンオキサイド)滅菌、ガンマ線滅菌など、各種滅菌処理に対応できるため、清潔性が求められる医療用具や実験器具に最適な材料です。
TPXは、PCやPPと比較して紫外線透過性が高く、光学分析機器のセルや測定容器としても活用されています。さらに、耐薬品性に優れており、酸、アルカリ、アルコールなどに対して劣化しにくいため、試験管やピペットチップ、マイクロプレートなどの理化学機器に広く採用されています。また、低吸湿性を持つため、長期間の使用でも寸法安定性を維持し、精密機器の部品としても高い信頼性を発揮します。
当社では、TPXの特性を最大限に活かした医療・理化学機器向けの製品開発を支援しています。高精度な金型技術を活用し、微細な形状や複雑なデザインにも対応可能です。試作段階から量産まで、用途に最適な材料グレードを提案し、高品質な製品の提供を実現します。
02 フードコンタクト(食品容器・調理器具)

TPXは、食品衛生法、FDA(米国食品医薬品局)、EU規制に適合した安全な材料であり、食品と直接接触する用途に広く使用されています。特に、電子レンジ対応の食品容器や、耐熱性が求められる調理器具の透明カバー、保存容器の蓋などの用途で優れた性能を発揮します。PCと比較すると、TPXは耐薬品性が高く、酸性やアルカリ性の食品との接触でも劣化しにくいため、長期間の使用が可能です。
また、TPXは表面張力が低く、汚れや油分が付着しにくいため、清掃が容易で衛生的な環境を維持できます。この特性を活かし、食品加工機器の透明部品や製造工程で使用される食品搬送トレイ、耐熱フィルムなどにも適用されています。さらに、密度が低いため軽量で、耐久性のある製品設計が可能となり、持ち運びや取り扱いのしやすさにも貢献します。
当社では、TPXを用いた食品用途向けの製品開発において、高品質な成形技術と適切な材料選定を提供しています。食品業界の厳しい安全基準を満たすための品質管理体制を整え、耐熱性・耐薬品性・透明性を兼ね備えた製品の開発を支援します。
当社のTPX成形における強み
01 製品デザイン、金型デザインに関するノウハウ

当社は、TPXの特性を最大限に活かした形状設計および金型設計に関する豊富なノウハウを有しています。TPXは優れた透明性と耐薬品性を持つ一方で、結晶性樹脂であるため、成形時の収縮管理が重要となります。当社では、肉厚の均一化や適切なリブ構造の配置により、成形後の歪みや応力集中を最小限に抑える設計を提案します。特に、透明性を損なわないために流動痕やウェルドラインの発生を抑える工夫を施し、高品質な外観を維持します。
また、TPXは低粘度で流動性が高く、バリが発生しやすい特性を持つため、金型の精密なクリアランス管理が必要です。当社では、高精度な金型設計技術を駆使し、シャープエッジの制御やゲート位置の最適化を行うことで、安定した品質の成形品を提供します。さらに、TPXの優れた離型性を活かして、成形サイクルを短縮し、量産効率のアップにもつなげています。特に、低い圧力でもしっかり成形できる条件を整えることで、細かい形状や薄肉製品でも高い寸法精度を実現します。また、流動解析や試作金型を活用した事前検証を通じて、最適な成形プロセスを構築します。
02 最適な成形条件の設定

TPXの成形では、結晶化速度の制御や冷却条件の最適化が品質安定の鍵となります。当社では、TPXの特性を考慮し、樹脂温度を280~320℃、金型温度を20~60℃に適切に管理することで、透明性と寸法安定性を両立させた成形を実現しています。特に、TPXの低密度特性を活かし、冷却過程の温度勾配を精密に制御することで、収縮ムラやヒケの発生を抑制しています。成形収縮率の正確な補正のため、試作段階での実測値フィードバックを徹底しています。
また、TPXは離型性が優れているため、一般的なポリオレフィンよりも成形サイクルの短縮が可能ですが、成形条件を誤ると製品表面の光学特性に影響を及ぼす可能性があります。射出条件は、光散乱防止とゲート歪み防止を考慮しつつ、最適な射出速度と圧力を設定しています。ゲート設計では、特に浅物製品にはピンゲートを推奨し、ウェルドライン発生を最小限に抑えています。当社では、適切な冷却時間と射出速度の調整を行い、成形品の透明度と寸法精度を最大限に高めるプロセスを確立しています。さらに、TPXは食品衛生性に優れた材料であり、医療・食品用途に求められる厳格な品質管理基準を満たす必要があります。また実樹脂温度モニタリングや溶融粘度のオンライン計測を通じて、製品の品質を確保しています。また、不純物混入防止にも細心の注意を払っています。試作から量産まで、一貫したサポート体制を整えており、お客様の要求に応じた最適な成形条件を提案いたします。