樹脂材料の図面表記はどこまで指定する?グレード併記と同等品の書き方
射出成形品の図面には、形状や公差とともに使用する材料が記載されます。材料欄の書き方によって、量産で得られる性能の再現性や、材料の供給事情が変わったときの対応のしやすさが大きく変わります。結論から言えば、グレード名まで具体的に指定したうえで、評価済みのグレードを複数併記しておくことが、性能の再現性と供給の安定を両立する書き方です。本コラムでは、選んだ材料を図面にどう表記すればよいかに絞って解説します。取り上げるのは、表記の3つのレベル、評価済みグレードを複数併記するメリット、グレード名とあわせて指定しておきたい項目の3点です。
樹脂材料の図面表記は3段階(樹脂種・充填材・グレード名)
図面の材料表記は、どこまで具体的に書くかによって、大きく次の3つのレベルに分けられます。
| 表記のレベル | 表記例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 樹脂種のみ | PPS | 該当する材料の幅が広く調達しやすい一方、充填材の有無や配合によって物性が大きく異なる |
| 樹脂種+充填材・含有率 | PPS-GF40 | 物性の目安がそろう。ISO 1043(JIS K 6899)に基づく記号表記が使える |
| メーカー名+グレード名 | 〇〇社 △△△-□□□ | 物性の再現性が最も高い |
表記が具体的になるほど、設計で意図した性能を量産でも安定して再現しやすくなります。特に、耐熱性や寸法安定性、難燃性などの要求が厳しい部品では、グレード名まで指定することが一般的です。
ただし、1つのグレードに絞って指定すると、そのグレードの供給事情の影響を受けやすくなります。この点への備えが、次に解説する複数グレードの併記です。
評価済みグレードの複数併記とは?「同等品」表記との違い
単一グレードの指定は再現性が高い反面、材料メーカーの供給停止や廃番が起きた場合には、代替材料の選定と再評価、図面改訂が必要になります。廃番時の対応は【樹脂グレードが廃番になったらどうする?代替材料選定と再評価の進め方】で、図面改訂の進め方は【射出成形品の図面改訂をどう管理する?設計変更時の金型修正と新旧切り替え】で解説しています。
そこで望ましいのが、評価を済ませた複数のグレードを図面に併記しておく方法です。たとえば「A社 〇〇〇-□□□ または B社 △△△-□□□」のように記載しておけば、どちらかのグレードの供給事情が変わっても、図面を改訂せずに切り替えられます。量産を止めずに済むため、調達面でも品質保証面でも安心感が大きくなります。
「A社 〇〇〇-□□□ または同等品」という書き方もよく見られますが、何をもって同等とするかの判断が関係者の間で分かれることがあります。評価済みのグレードを具体的に並べておけば、使用できる材料が明確になり、判断がぶれません。
なお、併記するグレードは、いずれも評価を済ませていることが前提になります。評価の進め方については【樹脂材料のセカンドソース化とは?代替グレードの評価項目と進め方】をご覧ください。
他社に相当グレードがない材料を採用するときの注意点
特殊な充填材を使ったグレードや、独自の配合を持つグレードの中には、他の材料メーカーに相当するグレードがないものもあります。こうした材料は性能面で優れていることも多く、採用そのものが問題になるわけではありません。
ただ、相当グレードがない場合、供給停止や廃番が起きたときに切り替え先を見つけにくくなります。採用を決める段階でこの点を把握しておくと、在庫の持ち方や代替案の検討など、将来の供給リスクに前もって備えることができます。
材料のご相談は、当社が強みとしている分野です。グレードの選定や相当グレードの有無、図面への書き方など、材料についてご不明な点があれば、設計の初期段階から当社へお気軽にご相談ください。
グレード名とあわせて指定する項目(色・UL登録・各種認証)
グレード名のほかにも、量産品質に関わる項目があります。
色については、ナチュラルか着色か、着色する場合は着色済みのコンパウンドを使うのか、マスターバッチなどで成形時に着色してよいのかを決めておくと安心です。着色方法によって、物性や色のばらつきに差が出ることがあるためです。
難燃性が求められる部品では、UL94の等級に加えて、UL登録(イエローカード)されたグレードであることが必要かどうかを明確にしておきます。
このほか、再生材・粉砕材の使用可否(【再生材・粉砕材の使用可否をどう決める?混合率と品質管理】)や、材料証明書の要否も取り決めておきたい項目です。形状と一体の機能要求は図面に、ロットごとの証明書の提出といった運用面は品質取決め書や購買仕様書に記載するといった切り分けをしておくと、図面が複雑になりすぎません。
・樹脂種と充填材・含有率が明記されているか
・評価済みのグレードを複数併記できているか
・採用予定のグレードに、他の材料メーカーの相当グレードがあるか
・併記した各グレードの評価結果が記録として残っているか
・色と着色方法、難燃等級・UL登録の要否が決まっているか
・再生材の可否と証明書の要否を、図面または取決め書で定めているか
まとめ
樹脂材料の図面表記は、具体的に書くほど量産での性能の再現性が高まります。一方で、単一グレードの指定は供給事情の影響を受けやすいため、評価済みのグレードを複数併記しておくことが、安定した量産への備えになります。相当グレードがない材料を採用する場合は、そ樹脂材料の図面表記チェックリストのことを採用段階で把握しておくと安心です。材料の選定や図面表記でお困りの際は、ぜひ当社へご相談ください。





