射出成形品の限度見本とは?作り方と外観検査の合否基準を揃える方法
ウェルドラインやヒケ、シルバーストリークといった外観不良がなぜ起き、どう抑えるかについては、射出成形におけるウェルドラインの原因と対策 | 射出成形の駆け込み寺.comをはじめ、成形不良カテゴリの各記事で解説しています。本コラムでは不良をなくす方法ではなく、出た現象をどこまで許容するかという判定基準を、発注側と成形側でどう揃えるかに絞ってご説明します。
限度見本とは ─ 外観の合否判定が割れる理由
限度見本とは、外観の合格と不合格の境目を、現物で示した見本のことです。
寸法であれば、図面の数値と公差で合否が決まります。しかし外観は数値で表しにくく、図面には「目立たないこと」「有害なキズなきこと」といった文言が書かれるのが一般的です。この表現では、何を目立つと感じるかが人によって異なり、発注側の受入検査と成形側の出荷検査で判定が割れます。同じ会社の中でも、検査員が替われば判定がぶれます。
限度見本は、この解釈のずれを埋めるためのツールです。誰が見ても同じ判定になる状態をつくることが目的です。
限度見本で決める外観不良と、数値基準で決める項目
限度見本の対象になりやすいのは、ウェルドライン、フローマーク、ヒケ、シルバーストリーク、ゲート跡、色ムラなど、程度の差を言葉や数値で表しにくい項目です。
一方で、バリの高さや黒点・異物の大きさのように、測れるものは数値基準で決めるほうが確実です。たとえば「バリ高さ0.1mm以下」、「黒点は直径0.3mm以下を2個まで」と決めておけば、判定にぶれは生じません。異物の大きさは、寸法の入った異物チャートと照合する方法が広く使われています。
何でも限度見本で決めようとすると、見本の数が増えて管理しきれなくなります。測れるものは数値で、測れないものは見本で、と分けることが最初の整理です。
限度見本の作り方 ─ 量産品で作り、観察条件を記載する
限度見本は、量産と同じ条件で成形したものから作ります。金型トライの段階の成形品で作ると、量産で出る外観と合わず、基準として機能しません。
見本は、良品、限度品(ぎりぎり合格)、不良品の3点を揃えると、境目がどこにあるのかが伝わりやすくなります。意匠面と非意匠面では許容の程度が違うのが普通ですので、面の区分ごとに作ります。
そして重要なのが、観察条件を固定することです。照明、観察する距離と角度、1個あたりの観察時間、裸眼かルーペか。これが決まっていなければ、同じ見本を使っても判定は揃いません。
見本には、品番、対象項目、該当部位のマーキングをし、同じものを2セット作って発注側と成形側の双方で保管します。
限度見本を画像で運用する方法と注意点
現物の限度見本は、通常1〜2セットしかありません。品質保証部門で保管されることが多く、成形機の横で量産中に照合するには手間がかかります。
そこで、判定基準を画像で残し、現場で参照する方法があります。
府中プラでは、外観の判定基準を画像で保存し、成形オペレーターの端末画面で量産中に確認できるようにしています。現物見本を取りに行かずに、成形機の横でその場で照合できる点が利点です。
画像であれば、複数の成形機で同時に参照でき、経時で劣化することもありません。ただし、注意が必要なことがあります。撮影の照明、角度、倍率、背景を固定しなければ、同じ現象でも写り方が変わります。モニターによって色の再現が異なるため、色ムラの判定には向きません。ヒケのような浅い凹凸は、撮影角度によっては写りません。
発注側としては、成形側が画像で運用している場合、撮影条件が固定されているか、その画像が双方で合意した基準に基づいているかを確認しておくとよいと思います。
限度見本の更新時期と、運用でつまずく点
現物の限度見本は、樹脂の経時変色や、取り扱いによるキズ・汚れで、基準としての役割を果たせなくなります。有効期限を決めて、定期的に作り直すことが望ましいでしょう。また現物と画像のどちらであっても、金型修正や材料変更、色替えの際には、外観が変わり得るため更新が必要になります。
運用面では、次のような点でつまずきやすくなります。見本を片方しか保管しておらず、いざというときに照合できない。観察条件を決めておらず、客先の検査室と工場で判定が割れる。ぎりぎり合格の品で見本を作ったため、その水準が常態化する。担当者の異動で、なぜその基準になったのか経緯が分からなくなる。
作成の経緯と合意の記録は、見本と一緒に残しておくことをおすすめします。
限度見本の作成・運用チェックリスト
・外観の合否判定を、図面の文言だけに頼っていないか
・数値で決められる項目(バリ高さ、異物の大きさなど)を数値基準にしているか
・限度見本を量産条件の成形品で作っているか
・照明、距離、角度などの観察条件は問題ないか
・限度見本を発注側と成形側の双方で保管しているか
・画像で運用する場合、撮影条件に問題はないか
・金型修正や材料変更の際に、見本と画像を更新しているか
まとめ
外観品質の判定は、言葉だけでは揃いません。限度見本は、合否の境目を具体的に示し、立場や担当者が変わっても同じ判定になるようにするための基準です。測れるものは数値で決め、測れないものは現物見本や画像で示す。そのうえで観察条件と更新のルールを決めておけば、外観をめぐる判定の食い違いは大きく減らせます。
府中プラでは、外観基準の取り決めから量産中の判定まで、お客様と基準を揃えながら対応しています。



