射出成形品の図面改訂をどう管理する?設計変更時の金型修正と新旧切り替え
金型を更新する機会に、設計や材料の何を見直すべきかについては、金型更新は設計見直しのチャンス:材料と設計の最適化で、成形部品はもっと良くなる | 射出成形の駆け込み寺.comで解説しています。本コラムでは変更の中身には踏み込まず、図面を変えると決めた後、その改訂をどう伝え、どう切り替えていくかという管理の方法に絞ってご説明します。
射出成形品の図面改訂が重くなる理由 ─ 設計変更は金型修正になる
金属の切削加工品であれば、図面を変えれば、次の加工から新しい寸法で製作できます。射出成形品では事情が異なり、図面の変更がそのまま金型の修正になります。金型の修正には期間と費用がかかり、修正後には再トライと再評価が必要です。
また金型には、削って寸法を変えるのは比較的容易でも、一度削った部分に肉を盛って戻すのは難しいという性質があります。製品の肉厚を増やす方向の変更は金型を削れば済みますが、減らす方向の変更は、溶接や入れ子の交換が必要になる場合があります。同じ0.1mmの変更でも、方向によって修正の手間は大きく変わります。
このように改訂の負担が大きいからこそ、最も有効な対策は、量産後の改訂そのものを減らすことです。そのためには、設計段階から量産性と信頼性を見込んだ提案ができる成形メーカーを選ぶことが重要です。府中プラでも、設計段階から金型構造や材料を含めたご提案を行い、量産に入ってからの改訂を減らすよう取り組んでいます。
図面改訂の種類と、金型・検査規格・限度見本への影響範囲
図面改訂の影響は、変更の種類によって異なります。寸法の変更は金型の修正を伴います。公差だけの変更であれば金型の修正は不要な場合もありますが、検査規格の変更は必要です。材料の変更は、金型の収縮率の見直しを含めて、最も大がかりな再評価になります。注記や表示の変更も、刻印の変更などで金型に及ぶことがあります。
注意したいのは、1枚の図面の改訂が、金型、成形条件、検査規格、限度見本、QC工程表、包装仕様にまで波及しうることです。図面だけを新しくして、周辺の書類が旧版のまま残っている、というのが典型的な失敗です。
図面改訂を成形側に伝えるときに明示すべきこと
図面の改訂を成形側に伝える際は、次の点を明確にしておきます。
まず、改訂箇所の明示と、新旧の対照です。改訂欄に「寸法変更」とだけ書かれていても、どこがどう変わったのかを図面全体から探すことになり、見落としの原因になります。
次に、どのロットから新図面を適用するかと、旧図面品の在庫の扱いです。使い切るのか、廃棄するのか、選別して使うのかを、改訂と同時に決めておきます。
そして、改訂の理由です。なぜ変えるのかが分かれば、成形側から、金型修正の少ない別の変更方法を提案できる場合があります。
新旧図面品の切り替えと混在防止
寸法の変更を伴う改訂では、金型修正、トライ、初品評価、承認、量産への切り替え、という順で進みます。この間、旧図面品の生産と出荷が続いていることが多く、新旧が混ざらないようにする手当てが必要です。
成形側では、切り替え後の最初のロットを識別し、仕掛品や在庫に旧図面品が残っていないかを確認します。発注側でも、受け入れた在庫の中に新旧が混在しないよう、切り替えのロットを把握しておきます。改訂後の初回出荷品に、新図面品であることを示す表示を付けるよう取り決めておくのも有効です。
図面の版管理でつまずく点 ─ 最新版の取り違え
改訂の管理でつまずきやすいのは、版の取り違えです。
どれが最新版なのか分からない。メールに添付された旧版の図面が、現場に残っている。電話やメールで変更を指示し、図面の改訂が後回しになる。3Dデータと2D図面の内容が食い違っている。軽微な変更だからと、図面を改訂しないまま運用してしまう。いずれも、現場で旧版に基づいて作業が行われる原因になります。
最新版の図面がどこにあるかを双方で決め、変更の指示は必ず図面の改訂とセットで行うことが基本です。
射出成形品の図面改訂チェックリスト
・改訂箇所と新旧の対照を、図面上で明示しているか
・新図面を適用するロットを決めているか
・旧図面品の在庫を使い切るか、廃棄するか、選別するかを決めているか
・改訂の理由を成形側に伝えているか
・検査規格、限度見本、QC工程表などの関連書類も改訂しているか
・3Dデータと2D図面の内容が一致しているか
・最新版の図面がどこにあるかを双方で決めているか
まとめ
射出成形品の図面改訂は、金型の修正と再評価を伴うため、金属加工品よりも負担が大きくなります。改訂の際は、改訂箇所と理由を明確に伝え、適用するロットと旧図面品の扱いを決め、関連する書類まで漏れなく更新することが大切です。そして何より、設計段階から量産性と信頼性を見込んだ提案のできる成形メーカーと組み、量産後の改訂そのものを減らすことが、最も確実な対策になります。
府中プラでは、設計段階からのご提案により、量産後の図面改訂を減らすお手伝いをしています。




