技術解説

射出成形設計者のためのMFR・MVR完全ガイド:違い・測定・活用法 

射出成形設計者のためのMFR・MVR完全ガイド:違い・測定・活用法 

府中プラが提供する本コラムでは、射出成形における重要な樹脂物性指標であるMFR(メルトフローレート)とMVR(メルトボリュームレート)について、設計者向けにその基本から実務での活用法までを体系的に解説します。両者は樹脂の流動性を示す重要な指標でありながら、その違いや測定条件による値の変動、適切な解釈がしばしば混同されがちです。本コラムを通じて、MFRとMVRの正確な知識を習得し、材料選定や成形設計における適切な評価と活用を促進することを目的とします。 

MFRとMVRの基本 

MFRとは 

MFR(Melt Mass-Flow Rate)は、熱可塑性樹脂の溶融時の流動性を示す指標の一つです。具体的には、規定された温度と荷重の下で、標準寸法のダイから10分間に押し出される樹脂の質量をグラム( g/10min )単位で表したものです。この値が大きいほど、樹脂の溶融粘度が低く、流動性が高いことを意味します。 
MFRの試験方法は、ISO 1133やASTM D1238、JIS K 7210といった国際規格および国内規格で厳密に定められています。測定は、メルトインデクサーまたは押出し式プラストメータと呼ばれる装置を用いて行われます。シリンダー内でペレット状の樹脂を特定の試験温度で加熱・溶融させ、ピストンを介して一定の荷重をかけ、ダイから押し出された樹脂量を測定するというのが基本的な流れです。 

MVRとは 

MVR(Melt Volume-Flow Rate)もMFRと同様に樹脂の流動性を示す指標ですが、こちらは10分間に押し出される樹脂の体積を立方センチメートル(cm³/10min)で表します。 MFRが質量を基準にしているのに対し、MVRは体積を基準にしている点が最も大きな違いです。
試験規格や基本的な測定方法はMFRと共通しており、同じくISO 1133やASTM D1238などで規定されています。測定方法には、押し出された樹脂を一定時間ごとに切り取ってその質量を測定する「A法」と、ピストンの移動距離を測定して体積を算出する「B法」があります。MVRは主にB法によって算出されます。フィラー(ガラス繊維やカーボン繊維など)を含有する樹脂の場合、材料内で密度が不均一になる可能性があるため、質量基準のMFRよりも体積基準のMVRで評価する方が、流動性そのものをより正確に反映する場合があります。 

MFRとMVRの関係と換算 

MFRとMVRは、試験温度における樹脂の溶融密度(ρ)を用いることで、相互に換算することが可能です。その関係は以下の式で表されます。 

MFR = MVR × ρ 

この式からわかるように、MVRの値にその樹脂の溶融密度を乗じることでMFRを算出できます。逆に、MFRを溶融密度で割ればMVRが求められます。
しかし、同一材料であっても、グレードによってMFRとMVRの値が異なる場合があります。これは、添加剤やフィラーの有無、種類、含有率によって溶融密度が変動するためです。例えば、ガラス繊維を多く含むグレードは、含まないグレードに比べて密度が大きくなるため、同じMVR値であってもMFR値は高くなります。材料のデータシートを確認する際は、MFRとMVRのどちらの数値が記載されているか、また換算に必要な溶融密度の値を把握しておくことが重要です。 

測定条件と結果への影響 

MFRおよびMVRの値は、測定条件によって大きく変動するため、その解釈には注意が必要です。 

温度設定の違いによる流動性変化 

樹脂の粘度は温度に大きく依存するため、試験温度が異なればMFR/MVRの値も当然変わります。特にPEI(ポリエーテルイミド)やPES(ポリエーテルサルホン)のような高耐熱性のスーパーエンプラは、高い温度でなければ溶融しないため、汎用樹脂とは異なる高温条件下で測定されます。材料規格ごとに試験温度が定められており、異なる種類の樹脂のMFR/MVRを単純に比較することはできません。 

荷重条件の設定と結果の相関 

試験時にピストンにかける荷重も、MFR/MVRの値に直接影響します。荷重が大きいほど、樹脂は速く押し出されるため、MFR/MVR値は高くなります。流動性が極端に低い材料では、標準的な荷重では測定が困難なため、より高い荷重をかけて測定することが規格で認められています。逆に流動性が非常に高い材料では、低い荷重で測定されることもあります。したがって、MFR/MVRの値を比較する際は、試験温度と試験荷重の両方が同一条件であることを必ず確認しなければなりません。 

測定方法の違い(Method A/Method B) 

前述の通り、測定方法にはA法とB法があります。A法は、押し出された樹脂(押出物)を一定時間間隔で切り取り、その質量を精密天秤で測定して10分あたりの質量(MFR)を算出する方法です。一方、B法はピストンの移動距離と時間を測定し、シリンダーの断面積から10分あたりの体積(MVR)を算出します。B法では、測定時に押出物の質量を測定することで、溶融密度も同時に求めることができ、そこからMFRを換算することも可能です。B法は測定の自動化が容易であるという利点があります。どちらの方法で測定された値であるかによっても、結果のばらつきに差が出ることがあります。 

値の解釈と活用方法 

高MFR/低MVRが示す流動性の傾向 

一般的に、MFRやMVRの値が高いほど、その樹脂は流動性が良い(溶融粘度が低い)と評価されます。これは、同じ圧力(荷重)でより多くの樹脂が流れることを意味します。逆に、値が低い場合は流動性が悪い(溶融粘度が高い)ことを示します。また、同一種類のポリマー内では、MFRが高いものは分子量が低く、MFRが低いものは分子量が高いという相関関係があります。 

充填性、寸法精度、機械的特性への影響 

MFR/MVRは、射出成形における充填性や製品品質を予測する上で重要な手がかりとなります。高MFRの材料は、薄肉品や複雑形状の製品でも隅々まで樹脂が流れやすく、充填不足のリスクを低減できます。しかし、流動性が良すぎる(MFRが高すぎる)と、バリが発生しやすくなったり、金型内での圧力保持が難しくなりヒケが生じやすくなるなど、寸法精度の低下を招くことがあります。
一方で、低MFRの材料は分子量が高い傾向にあるため、一般的に衝撃強度や靱性といった機械的特性に優れる傾向があります。ただし、流動性が低いため、充填には高い射出圧力が必要となり、成形品の残留ひずみが大きくなる可能性も考慮しなければなりません。 

射出成形と押出成形における評価視点の違い 

MFR/MVRの測定は、非常に低いせん断速度(樹脂が流れる速度)条件下での静的な流動性を評価するものです。 これに対し、実際の射出成形では、狭いゲートを高速で通過する際に非常に高いせん断速度がかかります。多くの樹脂は、せん断速度が速くなるほど粘度が低下する挙動を示します。そのため、MFRの値と実際の成形加工時の流動性が必ずしも一致しないケースがあることに注意が必要です。 一方、押出成形は比較的低いせん断速度で加工されるため、MFR/MVRの評価と相関が高い場合があります。より正確な加工性を知るためには、キャピラリーレオメーターを用いて、様々なせん断速度域での溶融粘度を評価することが有効です。 

材料選定・設計での実務的活用 

成形品サイズ・形状に応じた適正MFR/MVRレンジ 

製品の肉厚や形状、求められる外観品質によって、適切なMFR/MVRのレンジは異なります。例えば、大型で薄肉の製品や、微細なリブ・ボスが多い複雑な形状の製品を成形する場合は、流動性の良い高MFRのグレードが適しています。逆に、厚肉で高い機械的強度が要求される部品には、低MFRの高分子量グレードが選定されることが一般的です。 

金型構造(ゲート径・ランナー長さ)との関係 

金型の設計もMFR/MVRの選定に影響します。ランナーが長かったり、ゲート径が極端に小さい金型では、圧力損失が大きくなるため、流動性の高い(高MFRの)材料でないと充填が困難になります。金型設計の段階で、使用する樹脂のMFR/MVRを考慮し、適切なランナーやゲートのサイズを検討することが、安定した生産につながります。 

材料改良(フィラー添加、リサイクル材混合)による値の変動 

ガラス繊維や炭素繊維などのフィラーを添加すると、一般的に樹脂の流動性は低下し、MFR/MVRは低くなります。また、リサイクル材をバージン材に混合して使用する場合、リサイクル過程での熱履歴によってポリマーの分子量が低下し、MFRが高くなる傾向が見られます。これらの材料改良は物性値を変動させるため、採用にあたっては事前にMFR/MVRを測定し、流動性の変化を把握しておくことが不可欠です。 

カタログ値と実測値の差異と注意点 

材料メーカーが提供する物性表のMFR/MVR値は、あくまで特定の条件下で測定された代表値であり、保証値ではありません。ロットごとのばらつきや、成形前の予備乾燥の状態(特に吸湿性樹脂の場合)によっても、実際の流動性は変動します。特に精密な寸法精度が求められる製品や、成形条件がシビアな場合は、受け入れ検査としてMFRを実測し、カタログ値との差異を確認することが品質管理上、非常に重要です。 

まとめ 

MFRとMVRは、射出成形における樹脂の流動性を評価するための最も基本的で重要な指標です。両者の違い(質量基準か体積基準か)を正しく理解し、測定条件(温度、荷重)が結果に与える影響を把握した上で、その値を解釈する必要があります。
設計段階では、製品形状や要求品質に応じた適切なMFR/MVRのグレードを選定し、試作・量産の段階では、カタログ値と実測値の比較やロット間のばらつきを管理することで、安定した成形と高品質な製品づくりが実現できます。府中プラは、今後も設計者の皆様に有益な情報を提供してまいります。 

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