技術コラム

樹脂材料選定の手引き-物理的/機械的/熱的、電気的特性編-

樹脂材料選定の手引き-物理的/機械的/熱的、電気的特性編-

樹脂材料の選定は、製品設計において非常に重要なプロセスです。
特に、電子・電気、機械、流体制御機器、医療機器といった高精度・高性能が求められる分野では、材料の特性を十分に理解し、適切な選定を行うことが求められます。
しかし、エンプラやスーパーエンプラには膨大な種類のグレードが存在し、それぞれ異なる特性を持っています。
そのため、適切な材料選定を行うためには、多角的な視点から材料の特性を評価する必要があります。

そこで当社では、材料選定の際に考慮すべき主要な特性を整理し、5つの視点から解説する「材料選定の手引き」を作成しました。本コラムでは、この「材料選定の手引き」のPart-1「物理的特性編」、Part-2「機械的特性編」、Part-3「熱的・電気的特性編」の概要についてご紹介します。

Part-1「物理的特性編」

物理的特性は、樹脂の基本的な性質を示すものであり、材料選定の出発点となります。特に以下の特性が重要です。

  1. 比重:材料の密度を示し、軽量化設計やコスト管理に影響を与えます。特に、自動車や航空機部品では軽量な材料が求められます。
  2. 成形収縮率:射出成形後の寸法変化を示し、精密部品の製造において重要な指標です。
  3. 吸水率:吸湿性による寸法変化や強度低下を防ぐため、医療機器や電子部品では低吸水率の材料が推奨されます。
  4. 光学特性:光透過率、屈折率、ヘイズなどが該当し、レンズや透明カバーに適した材料選定に役立ちます。
  5. 流動性:MFR(メルトフローレート)やスパイラルフローなどを用い、成形性の最適化を図ります。

物理的特性を理解し、用途に適した材料を選定することで、成形品の品質やコスト効率を向上させることができます。

Part-2「機械的特性編」

機械的特性は、材料がどの程度の力に耐えられるかを示す重要な指標です。特に以下の特性が注目されます。

  1. 引張強度・弾性率:引張荷重に対する耐性を示し、構造部品の耐久性評価に不可欠です。
  2. 曲げ強度・弾性率:部品が曲げ荷重を受けた際の変形特性を評価し、カバーやケースなどに適した材料を選定します。
  3. 衝撃強度:アイゾッド衝撃試験やシャルピー試験を用い、耐衝撃性を評価します。
  4. クリープ特性:長期間にわたり荷重を受けた際の変形挙動を示し、高温環境下の構造部品にはクリープ耐性の高い材料が必要です。
  5. 疲労特性:繰り返し荷重による破壊耐性を評価し、自動車部品や医療機器の寿命予測に活用されます。
  6. 硬度(ロックウェル硬度・鉛筆硬度):耐摩耗性や表面の耐傷性を示し、外装部品やディスプレイカバーの選定基準となります。

機械的特性の把握は、製品の長期的な耐久性や安全性を確保する上で重要な要素となります。

Part-3「熱的・電気的特性編」

熱的特性および電気的特性は、特に高温環境や電気絶縁が求められる用途において極めて重要です。

熱的特性

  1. 荷重たわみ温度(HDT):高温下での剛性を評価し、自動車エンジン部品や電気機器の筐体設計に活用されます。
  2. 長期使用温度(RTI):長期間の使用に耐えうる最高温度を示し、電子部品や精密機器に適用されます。
  3. 線膨張係数(CTE):温度変化による寸法変化を示し、金属部品との組み合わせ設計時に重要です。
  4. 熱伝導率:放熱性を評価し、電子機器の熱対策に使用されます。

電気的特性

  1. 絶縁破壊強度:電気絶縁性能を評価し、高電圧機器の設計において不可欠です。
  2. 体積固有抵抗:材料の電気抵抗を示し、プリント基板や絶縁部品の選定に影響を与えます。
  3. 耐アーク性・耐トラッキング性:電気スイッチや配線部品の安全性を確保するために重要です。
  4. 誘電率・誘電正接:高周波通信機器や電子基板の選定基準として活用されます。

これらの特性を適切に評価することで、高温環境下や電気絶縁性が求められる製品の安全性・信頼性を向上させることが可能です。

材料選定の詳細をより知りたい方は、技術資料をダウンロードください!

本記事では、材料選定の手引き(物理的/機械的/熱的、電気的特性編)に関する概要をお伝えいたしました。より詳細を知りたい方は、ダウンロードいただける技術資料をご覧ください。

まとめ

本コラムでは、「材料選定の手引き」Part1~3の概要についてご紹介しました。
物理的特性、機械的特性、熱的・電気的特性の理解を深めることで、適切な材料選定が可能となります。
材料選定は単なる特性比較だけでなく、成形方法や使用環境を考慮した総合的な判断が求められます。当社では、これらの特性を活かした最適な材料提案を行っております。
詳細な情報や技術資料については、ぜひ「材料選定の手引き」をダウンロードして頂ければと存じます。

「材料選定の手引き」Part-4安全規格、法規制編、Part-5環境特性編については、こちらからご覧ください。

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