技術解説

樹脂成形品の寸法測定はいつ行う?後収縮・吸水による寸法変化と測定条件

樹脂成形品の寸法測定はいつ行う?後収縮・吸水による寸法変化と測定条件

射出成形品の寸法がなぜばらつくのか、公差をどう設定するかについては、射出成形品の寸法はなぜバラつくのか?:金属加工とは異なる公差設計の視点 | 射出成形の駆け込み寺.comと射出成形で公差を実現するために:材料・金型・設計で整える精度管理の実践 | 射出成形の駆け込み寺.comで、吸水による寸法変化の仕組みについては水に強いエンプラはどれ?耐加水分解性の原理とPA(ナイロン)吸水対策の基本 | 射出成形の駆け込み寺.comで解説しています。本コラムでは公差の妥当性には触れず、同じ製品の寸法を、いつ、どのような環境で測るべきかに絞ってご説明します。

成形直後に測った寸法は最終寸法ではない

樹脂成形品の寸法は、成形したあとも変化します。同じ製品であっても、成形直後に測った値と、翌日に測った値は一致しない場合もあります。

発注側の受入検査と、成形側の出荷検査で寸法が合わないという相談は少なくありません。このとき、製品そのものに問題があるとは限りません。測った時点と測った環境が違えば、同じ製品でも値は変わります。寸法の食い違いを議論する前に、まず測定の条件が揃っているかを確認する必要があります。

成形後に寸法が変化する3つの要因 ─ 温度・後収縮・吸水

成形後の寸法を動かす主な要因は、温度、後収縮、吸水の3つです。それぞれ、影響が落ち着くまでの時間の長さが異なります。

温度は、最も短い時間で効く要因です。成形直後の製品は温かく、室温まで冷えるあいだ収縮が続きます。また樹脂の線膨張係数は金属の数倍から10倍程度と大きく、たとえば長さ100mmのPA製品であれば、測定時の温度が3℃違うだけで0.02~0.03mm程度の差が生じます。

後収縮は、主に結晶性樹脂で起こります。成形後も結晶化がゆっくり進み、それに伴って製品が収縮します。成形時に残った応力が緩和されることで、反りや変形が進む場合もあります。落ち着くまでの時間は、材料と肉厚によって変わります。

吸水は、最も長い時間をかけて効く要因です。PAのような吸水性の樹脂は、空気中の湿気を吸って膨らみ、寸法が大きくなります。

設計者の方に意識していただきたいのは、吸水率が材料によって大きく異なることと、飽和するまでに時間がかかることの2点です。PPSやLCPのように吸水率がごく低い材料では、吸水による寸法変化はほとんど問題になりません。一方でPA6やPA66は、使用環境によっては数%の水分を吸います。材料ごとの吸水率の違いは、高湿度・水回りで使えるのはこのエンプラ! 吸水性比較と正しい設計・材料選定 | 射出成形の駆け込み寺.comで整理しています。

また吸水は表面から内部へ進むため、肉厚が厚いほど飽和までの時間は長くなります。肉厚が2倍になれば、飽和までの時間はおよそ4倍です。肉厚のある製品では、室内環境で吸水が平衡に達するまで数週間から数か月かかることもあります。成形直後に図面どおりの寸法でも、使用環境で吸水が進んだ後に組み付けできなくなる、ということが起こり得ます。

寸法測定のタイミングを目的別に決める

測定のタイミングは、何のために測るのかで決めます。

工程内検査では、成形直後の値で傾向を見るのが有効です。ただし、直後の値が安定後にどう変わるのかを、あらかじめ把握しておく必要があります。

初品検査や出荷検査では、寸法が安定してから、決められた経過時間で測ります。

受入検査の値は、輸送と保管を経た後のものです。成形側と測定の条件を揃えておかなければ、両者の値は比較できません。

金型の修正量を決めるための測定は、評価目的に応じて定めた経過時間後に行います。成形直後の値をもとに修正すると、修正後に狙いの寸法からずれてしまいます。

寸法測定の環境条件 ─ 温度・湿度と測定前の取り扱い

測定の時点と並んで重要なのが、測定する環境です。

測定室の温度と湿度は、基準を決めて管理します。プラスチックの試験では、JIS K 7100に定める標準雰囲気(温度23℃、湿度50%RH)が参照されることが多くあります。

製品を測定室に持ち込んだら、室温になじむまで置いてから測ります。測定具も同じ環境に置いておきます。手で長く持つと体温で製品が温まるため、治具を使う、持つ時間を短くするといった配慮も必要です。

図面・検査規格に明記しておく測定条件

測定条件を揃えるには、次の点を図面や検査規格で明示しておくことが確実です。成形後の経過時間、測定環境の温湿度、吸水性の材料であれば乾燥状態で測るのか調湿後に測るのか、そして両者の値が合わないときの照合の手順です。

図面への注記としては、「寸法は成形後○時間以上経過したものを、23±2℃の環境で測定すること」といった書き方が考えられます。

府中プラでは、測定までの経過時間や測定環境について、お客様のご要求に応じて、指定された条件で測定します。条件をあらかじめ指定いただくことが、双方の測定値を揃える近道になります。

樹脂成形品の寸法測定チェックリスト

・寸法測定を行う成形後の経過時間を決めているか

・測定環境の温度と湿度を決めているか

・製品と測定具を測定室の温度になじませてから測っているか

・吸水性の材料で、乾燥状態と調湿後のどちらで測るかを決めているか

・使用環境での吸水率と、飽和までの時間を設計時に見込んでいるか

・金型修正量を決める測定を、寸法が安定した後に行っているか

・成形側と受入側で値が合わないときの照合手順を決めているか

まとめ

樹脂成形品の寸法は、温度、後収縮、吸水によって、成形後も変化を続けます。いつ、どの環境で測ったかが揃っていなければ、同じ製品でも値は一致しません。測定の時点と環境を図面や検査規格で決めておくこと、そして設計段階で材料の吸水率と飽和までの時間を見込んでおくこと。この2点が、寸法をめぐる食い違いを防ぐ基本になります。

府中プラでは、お客様のご指定に沿った測定条件で寸法管理を行っています。

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