射出成形品の包装仕様はどう決める?傷・変形・異物を防ぐ梱包の考え方
ヒケやウェルドライン、バリといった外観不良が、成形の段階でなぜ起き、どう抑えるかについては、成形不良カテゴリの各記事で解説しています。本コラムでは、成形を終えた製品を、傷や変形を生じさせずに届けるための包装仕様の決め方に絞ってご説明します。
包装仕様が成形品の品質に関わる理由
成形品の不良は、すべてが成形の段階で生じるわけではありません。包装と輸送の段階でも、擦り傷、打痕、積み重ねによる変形、ホコリや異物の付着といった不良が生じます。樹脂は帯電しやすいため、静電気で周囲の異物を引き寄せることもあります。
厄介なのは、受入検査で見つかった不良が、成形によるものか、包装や輸送によるものかを切り分けにくいことです。原因が分からないまま成形条件の見直しに進んでしまうと、対策が空振りに終わります。
また、包装仕様を取り決めていなければ、包装は成形側の判断で決まります。発注側が想定していた状態と異なる形で届き、そこで初めて問題が見つかる、ということが起こり得ます。
包装仕様で決める項目 ─ 内装・入数・外装・表示
包装仕様として取り決める項目は、主に次のとおりです。
内装は、製品を1個ずつ包むのか、仕切りの付いたトレイに並べるのか、袋にまとめて入れるのかを決めます。そのうえで、1袋や1箱あたりの入数と、箱を何段まで積むかを決めます。
外装は、使い捨ての段ボールにするのか、繰り返し使う通い箱にするのかを決めます。
製品によっては、異物の付着を防ぐ防塵の手段や、静電気を防ぐ帯電防止の包装材も必要になります。
ラベルの表示内容も包装仕様の一部です。品番、数量、ロット、成形日を基本に、必要に応じて図面の版数などを加えます。表示の内容は、不具合が起きたときに遡れるかどうかを左右します。
製品の特性に合わせた包装 ─ 外観品・薄肉品・電子部品・医療機器
包装の形は、製品の特性から決めていきます。
外観が重視される製品は、製品どうしが接触して擦れないよう、個別の包装やトレイで分けて並べます。薄肉で変形しやすい製品や、細いリブのある製品は、荷重がかからない包装にし、段積みの数を制限します。重さと形状も、入数と外装の強度を決める要素になります。
電子部品や医療機器などに使われる製品では、ホコリや異物の付着を嫌うため、清浄度に配慮した包装が求められます。静電気で異物を吸着しないよう、帯電防止の包装材を使うことも検討します。府中プラでは、医療機器向けの成形品にも実績があり、製品を1個ずつ個包装しているケースもあります。包装について個別のご要望があれば、お聞かせください。
包装コストとのバランス ─ トレイ・通い箱・入数
包装は、手厚くするほどコストがかかります。個別のトレイは、材料費に加えて、製品を並べる工数が増えます。袋へのまとめ入れで済むかどうかは、傷や変形のリスクと費用の兼ね合いで判断します。
通い箱は、包装材の費用と廃棄物を減らせる一方で、空箱の回収、洗浄、破損した箱の補修といった管理が必要です。府中プラでは、お客様が指定する通い箱での納入を多く手がけており、運用の経験を積み重ねてきました。
入数は、発注側の組立ラインへの投入の単位に合わせると、開梱や数量合わせの手間が省けます。
海外へ輸送する場合は、輸送の期間が長く、コンテナ内の温度変化や荷扱いの影響も受けます。当社は海外への輸出にも長年の実績があり、輸送の条件を踏まえた包装に対応しています。
包装仕様書による取り決めと変更管理
包装仕様は、図や写真を付けた包装仕様書として文書にし、双方で合意しておきます。言葉だけの取り決めでは、入れ方や向きの解釈が分かれます。取り決めた後は、初回の出荷で実際の包装状態を確認します。
包装の変更も、材料や工法の変更と同じく、変更管理の対象として扱います。包装が変われば、輸送中の製品の状態が変わるためです。
運用面では、包装が慣習や口頭の取り決めのまま運用され、担当者の交代で崩れてしまう、包装材の仕入先が変わって材質や厚みが変わる、といった点でつまずきやすくなります。
射出成形品の包装仕様チェックリスト
・包装仕様を、図や写真付きの文書で取り決めているか
・外観や形状の特性に合わせて、内装の形を決めているか
・入数と段積みの数を決めているか
・防塵や帯電防止が必要な製品かを確認しているか
・ラベルの表示内容に、ロットと成形日を含めているか
・通い箱の場合、回収・洗浄・破損時の取り扱いを決めているか
・包装の変更を、変更管理の対象として扱っているか
まとめ
成形品の品質は、成形の段階だけでなく、包装と輸送の段階でも左右されます。製品の特性から包装の形を決め、コストとのバランスを取りながら、その内容を包装仕様として取り決めておくことが大切です。包装の変更も変更管理の対象とし、取り決めた状態を保ち続けることで、届いた製品の品質を安定させることができます。

