技術解説

射出成形品の保管条件とは?温度・湿度・紫外線から品質を守る保管方法

射出成形品の保管条件とは?温度・湿度・紫外線から品質を守る保管方法

樹脂が水分を吸って寸法や物性が変わる仕組みについては水に強いエンプラはどれ?耐加水分解性の原理とPA(ナイロン)吸水対策の基本 | 射出成形の駆け込み寺.comで、高温多湿での劣化の仕組みについては高温多湿で樹脂はなぜ劣化するのか? - 吸水・加水分解・応力破壊の連鎖メカニズム - | 射出成形の駆け込み寺.comで解説しています。本コラムでは材料の変化の仕組みには踏み込まず、成形品を出荷の前後にどのような環境で、どう置いておくべきかという保管の実務に絞ってご説明します。

樹脂成形品は保管中にも変化する

入荷したときには良品だった成形品が、組立に使う段階で不良になっている。こうした問題の原因が、保管にあることは少なくありません。

樹脂の成形品は、保管している間にも少しずつ変化します。水分を吸って寸法が変わる、高温のもとで荷重を受けて変形する、光にさらされて変色する、ホコリが付着する、といった変化です。いずれも、置かれている環境と置き方によって、起こりやすさが大きく変わります。

成形の段階で品質をつくり込んでも、保管の段階で損なわれてしまえば意味がありません。保管条件は、品質管理の最後の工程として考える必要があります。

保管環境で管理する5つの条件 ─ 温度・湿度・光・清浄度・化学物質

保管環境で管理すべき条件は、主に温度、湿度、光、清浄度、化学物質の5つです。

温度については、夏場の倉庫や輸送中のコンテナが、条件によっては60℃を超えることに注意が必要です。高温のもとで段積みの荷重がかかり続けると、製品が少しずつ変形していきます。薄肉の製品や、細長い製品では特に起こりやすくなります。

湿度は、PAのような吸水性の材料で問題になります。保管している間の湿度によって、寸法が変わります。

光については、直射日光や照明に含まれる紫外線によって、黄変や表面の劣化が進む材料があります。ABSやPC、POMなどが代表的です。窓際や屋外での保管は避けます。

清浄度は、ホコリの多い場所で保管すると、開梱したときに異物が付着するという問題です。

化学物質については、PCなどの非晶性樹脂が、溶剤や油のミストに触れると、成形時の残留応力のある部分から割れることがあります。ソルベントクラックと呼ばれる現象です。塗装や洗浄の工程の近くでの保管は避けます。

材料によって、これらの影響の受けやすさは異なります。府中プラが多く扱うPPSやPEEKは、吸水率が低く、薬品にも強いため、湿度や化学物質の影響は受けにくい材料です。長期保管では、他の樹脂と同様に直射日光を避けるのが基本です。

段積みと置き方で防ぐ変形と傷

保管環境と並んで大切なのが、置き方です。

段積みには上限を設けます。下段の箱に荷重が集中すると、中の製品が変形します。箱の向きも、製品に荷重がかからない向きに揃えます。床に直に置くと、湿気やホコリの影響を受けやすくなるため、パレットや棚を使います。

見落とされやすいのが、開封した後の半端品です。包装を解いたまま棚に置かれ、ホコリの付着や傷の原因になります。使い残した製品は、元の包装に戻すか、蓋のある容器に移しておきます。

包装仕様で取り決めた状態を、保管の間も保てているか、という視点で置き方を見直すことが基本です。

保管期間の管理 ─ 先入れ先出しと長期在庫の再検査

保管の期間が長くなるほど、変化は進みます。先に入荷したものから先に使う、先入れ先出しを徹底することが基本です。

製品によっては、保管期限を設けることも検討します。期限を超えた製品は、使用や出荷の前に、外観や寸法を再検査します。

保守用の部品のように、長期の保管が前提となる製品もあります。こうした製品では、保管の環境と、定期的に状態を確認する頻度を、あらかじめ決めておきます。

保管条件を発注側と成形側で取り決める場面

保管条件について取り決めが必要になるのは、主に次の場面です。

成形側が完成品を在庫として持ち、発注側の要求に応じて出荷する場合は、成形側での保管条件と保管期間を取り決めます。

発注側で受け入れた後の保管は、発注側の管理になります。ただし、材料や製品の特性によって必要な保管条件は変わるため、成形側から注意点を伝えてもらうとよいでしょう。

そして、長期在庫となった製品を再検査するかどうかと、その判断の基準です。どちらが、いつ、何を確認するかを決めておくことで、保管中の変化による不具合を防げます。

射出成形品の保管条件チェックリスト

・保管場所が、高温や直射日光にさらされていないか

・吸水性の材料で、保管中の湿度の影響を考慮しているか

・溶剤や油のミストが発生する工程の近くで保管していないか

・段積みの上限と、箱の向きを決めているか

・開封後の半端品を、包装に戻すか容器に移しているか

・先入れ先出しを徹底しているか

・長期在庫の再検査の要否と基準を決めているか

まとめ

射出成形品は、保管している間にも、温度、湿度、光、化学物質、置き方の影響を受けて変化します。材料の特性に合わせて保管環境を整え、段積みや半端品の扱いといった置き方に注意し、先入れ先出しと長期在庫の再検査を仕組みにしておくことが大切です。保管は品質管理の最後の工程であり、発注側と成形側で条件を取り決めておくことで、成形段階でつくり込んだ品質を、使う時点まで保つことができます。

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