射出成形金型の保管で確認すべきこと ─ 錆を防ぐ保管前の処置と長期保管の管理
量産中の金型をどのようにメンテナンスしているかについては、府中プラの金型メンテナンス(金型汚染とその対策) | 射出成形の駆け込み寺.comで当社の取り組みをご紹介しています。本コラムでは量産中のメンテナンスではなく、量産の合間の休止期間や、量産を終えた後の長期保管など、金型を使っていない期間の保管について、金型を資産としてお持ちの方が確認しておきたい点に絞ってご説明します。
保管中の金型に起こる劣化とその影響
金型は、使っていない間にも劣化します。
代表的なのが錆です。金型の表面や、製品の形状を転写するキャビティに錆が出ると、成形品の外観に直接影響します。スライドなどの可動部は、長く動かさないと固着することがあります。ホットランナーを持つ金型では、ヒーターや配線の劣化も起こります。
保管の状態が悪ければ、再び生産するときに修理が必要になります。修理の期間だけ生産の再開が遅れ、補給品の急な注文に応えられない、という事態にもつながります。金型の保管は、再生産の品質と納期を左右する管理です。
金型保管に入る前の処置
保管の質は、金型をしまう前の処置でほぼ決まります。
まず、最後に成形した製品を保管しておきます。再び生産したとき、休止前と同じ状態で成形できているかを比べる基準になります。
次に、金型の清掃です。成形中に発生したガスの成分や樹脂の残りが付着したまま保管すると、腐食の原因になります。PPSは、過度な滞留や高温によって熱分解すると腐食性成分を含むガスが生じることがあるため、こうした材料を成形する金型では、特に念入りな清掃が必要です。
清掃の後は、防錆処理を行います。あわせて、損傷や摩耗の有無を点検し、記録に残します。修理が必要な箇所は、保管に入る前に直しておくのが理想です。
結露を防ぐ保管環境と置き方
金型の錆の大きな原因は、結露です。温度の変化が大きい場所や、湿気の多い場所では、金型の表面に水滴が付きます。屋内で、温度と湿度の変化が小さい環境で保管します。
置き方も重要です。金型は重量が大きいため、その重さに耐える棚が必要です。品番や最後に使用した日を表示し、どの金型がどこにあるかをすぐに把握できるようにしておきます。取り出し治具やホットランナーのコントローラ、予備の部品は、金型と一緒に保管し、いざ使うときに見つからない、ということがないようにします。
府中プラでは、サイズの大きいものを除き、お預かりした金型を自動倉庫で保管しています。防錆対策を施したうえで保管し、必要なときにすぐに取り出せる状態を保っています。
保管中と再使用時の点検
長期間保管する金型は、定期的に防錆の状態を確認します。防錆剤は時間とともに効果が薄れるため、保管が長くなる場合は処理をやり直します。
再び使用する前には、金型を点検し、可動部の動きを確認したうえでトライを行います。トライで得た製品は、休止前に保管しておいた製品と比べ、初品と同等の評価をしてから量産に戻します。
こうした点検や修理の質は、金型の構造をどれだけ理解しているかで変わります。当社では、日常の金型メンテナンスを外部に任せず、金型の構造を深く理解した当社の社員が、社内で実施しています。型の修正や修理のために金型メーカーへ返送した際には、金型のコンディションがよいと評価をいただくことも少なくありません。
金型を預けるときに取り決めておくこと
金型を成形先に預けている場合は、次の点を取り決めておきます。
保管の場所と方法、定期点検の頻度、そして量産を終えた後の扱いです。量産終了後も補給品のために保管を続けるのか、返却するのか、廃棄するのかを決めておかないと、扱いが曖昧なまま年月が過ぎていきます。
所有者としては、固定資産台帳に載っている金型と、実際の保管状況を、定期的に照合することをおすすめします。長く使われていない金型を洗い出し、今後の扱いを決める機会にもなります。
射出成形金型の保管チェックリスト
・保管前に清掃と防錆処理を行っているか
・結露しにくい屋内で保管しているか
・治具やコントローラ、予備部品を金型と一緒に保管しているか
・再使用の前に点検とトライを行っているか
・量産終了後の保管、返却、廃棄の扱いを決めているか
まとめ
金型は使っていない間にも、錆や固着などによって劣化します。保管に入る前の清掃と防錆処理、結露を防ぐ保管環境、保管中の定期点検、再使用前のトライ。この一連の管理によって、再び生産するときにも、休止前と同じ品質の製品を、必要な時期に供給することができます。金型を預けている場合は、保管の方法と量産終了後の扱いを取り決め、資産として適切に保管されているかを定期的に確認しておくことが大切です。

