PA樹脂の歴史と今後の動向

本コラムでは、PA(ポリアミド)樹脂についてお話したいと思います。ひと口にPA樹脂といっても、PA6,PA66を始めとしてその種類はかなりの数にのぼります。PA樹脂の材料選定をしようと、久しぶりにPA樹脂メーカーのホームページを閲覧してみたら、既に別の会社に事業譲渡されていたのを知った、といったご経験も多いのではないでしょうか。
PA樹脂業界は、参入メーカーが国内、海外と非常に多く、事業統合や再編により絶えず変化していることから、最新状況についていくのも難しい樹脂と言えるかもしれません。
そこで、本コラムではPA樹脂業界の成り立ちや各社の製品ラインナップ、業界動向を簡単にまとめてみたいと思います。
PA樹脂の誕生と開発の歴史
PA樹脂の歴史は1935年、デュポン社のWallace H. Carothers博士によるPA66(ポリアミド66)の合成に始まります。
1938年には、I.G.ファルベン社(現BASF)のPaul Schlack博士がPA6(ポリアミド6)を開発し、こんにちのPA樹脂における2大樹脂の礎が確立されました。その後、PA樹脂の種類は主に以下の方向で様々なPA樹脂が開発され、商業生産が開始されてきました。
1) 炭素数の異なるモノマーの組み合わせによる新規PA樹脂の開発
2) 芳香族成分の導入による高性能化
3) バイオマス由来原料の活用による環境対応型PA樹脂の開発
1940年代:PA610がデュポン社によって開発
PA11が1947年6月に最初の特許が出願され、Organico社によってRilsan®の
商標で商業化
1960年代:PA12がEMS-CHEMIE社によって開発・商業化
1980年代:PA46がDSM社によって開発・商業化
PA6T、PA9T、PA10Tなどの芳香族ポリアミドの開発が進行
1990年代:PA11、PA12などの長鎖ポリアミドの応用が拡大
2000年代:バイオベースPA(PA410、PA1010など)の開発が活発化
2010年代以降:高性能PPA(ポリフタルアミド)やPA12Tなどの開発が進む
また、この時期には射出成形用のMCナイロン(モノマーキャスティングナイロン)も開発され、高強度・高耐摩耗性を要求される用途で注目を集めました。MCナイロンは、その優れた機械的特性により、金属代替材料としても広く利用されています。
主要メーカーと製品ラインナップ
欧米メーカー
BASF(ドイツ)
BASFは、ポリアミド樹脂の分野で長年にわたり成功を収めてきた世界的な化学メーカーです。1938年にPaul Schlack博士がPA6を開発し、1940年代に商業生産を開始しました。2019年にはSolvayのPA事業を買収し、PA事業を強化しています。
製品開発方針:BASFは、幅広い用途に対応する総合的なポートフォリオの構築に注力しています。
主要製品:Ultramid®(ウルトラミッド)ブランドで、PA6、PA66、PA66/6コポリマー、PA610、PA6T/6などを展開しています。
特徴:BASFのPA製品は、非強化材、ガラス繊維強化材、ミネラル強化材、長繊維強化材など、幅広いラインナップを特徴としています。
用途:自動車部品、電気・電子部品、産業機械部品など
グレードラインナップ:標準グレード、高剛性グレード(ガラス繊維強化タイプ、GF含有率15-60%)、耐衝撃グレード(エラストマー変性タイプ)、難燃グレード(ハロゲンフリー難燃タイプ)、導電性グレード(カーボンファイバー配合タイプ)
Celanese(アメリカ)
Celaneseは、高性能エンジニアリングポリマーの分野でグローバルに事業を展開しています。1918年に前身企業が設立され、2004年に現在のCelaneseとして法人化されました。2022年2月にデュポンのモビリティ&マテリアルズ事業の大半を買収し、PA事業を強化しました。
製品開発方針:Celaneseは、幅広い用途に対応する総合的なポートフォリオの構築を目指しています。
要製品:Zytel®(買収により取得):PA66、PA6、LCPA
特徴:Celaneseの製品は、高強度、高剛性、耐熱性に優れています。
用途:自動車部品、電気・電子部品、航空宇宙、消費財、エネルギー、医療、産業用途など
グレードラインナップ:標準グレード、高強度グレード(ガラス繊維強化タイプ)、耐衝撃グレード(エラストマー変性タイプ)、難燃グレード(ハロゲンフリー難燃タイプ)、耐熱グレード(熱安定剤添加タイプ)
Arkema(フランス)
Arkemaは、バイオベースのポリアミド11(PA11)の先駆者として知られています。1947年にRilsan®(PA11)を開発し、1950年代に商業生産を開始しました。2011年にはTotal社の特殊樹脂事業を買収し、製品ラインナップを拡大しました。
製品開発方針:Arkemaは、バイオベースPAの先駆者として環境対応製品の開発に注力しています。
主要製品:Rilsan®:PA11(100%バイオベース)、Rilsamid®:PA12、Pebax®:ポリアミドエラストマー
特徴:Arkemaの製品は、耐油性、耐薬品性、低温特性に優れています。
用途:自動車燃料ライン、スポーツ用品、医療機器など
グレードラインナップ:標準グレード、高剛性グレード(ガラス繊維強化タイプ)、可塑化グレード(柔軟性向上タイプ)、導電性グレード(静電気防止タイプ)、耐衝撃グレード(エラストマーアロイタイプ)
Envalior(旧DSM、オランダ / 旧LANXESS、ドイツ)
Envaliorは、DSMエンジニアリングマテリアルズとLANXESSハイパフォーマンスマテリアルズの統合により2023年に設立された新会社です。DSMは1902年にオランダ国営炭鉱会社として設立され、化学事業へと転換。LANXESSは2004年にBayer AGからスピンオフして設立されました。2023年4月に両社の樹脂部門が統合し、Envaliorが誕生しました。
製品開発方針:高性能エンジニアリングプラスチックの開発に注力し、持続可能なソリューションの提供を目指しています。
主要製品:Akulon®:PA6、PA66
Stanyl®:PA46
ForTii®(旧DSM):PPA(ポリフタルアミド)
Durethan®(旧LANXESS):PA6、PA66
特徴:高温耐久性、低摩擦・低摩耗性、高強度、高剛性に優れた製品を提供しています。
用途:自動車部品、電気・電子部品、産業機械部品、航空宇宙分野など
グレードラインナップ:標準グレード、高耐熱グレード、低摩擦グレード、高強度グレード、難燃グレードなど、幅広いラインナップを展開しています。
EMS-CHEMIE(スイス)
EMS-CHEMIEは、高性能特殊ポリアミドの分野でグローバルリーダーの地位を確立しています。1960年代にPA12の開発・商業化を行いました。特に、長鎖ポリアミドや高性能ポリアミドの開発に注力し、自動車、電子機器、産業機械など幅広い分野で高い評価を得ています。環境に配慮した製造プロセスや、バイオベース原料の活用など、持続可能な技術革新にも積極的に取り組んでいます。
製品開発方針:EMS-CHEMIEは、高性能特殊ポリアミドの開発に注力しています。
主要製品:Grilamid®:PA12、非晶性PA
Grivory®:PA66+PA6I/6T、PPA(ポリフタルアミド)
Grilon®:PA6、PA66、共重合
特徴:EMS-CHEMIEの製品は、低吸水性、耐薬品性、耐摩耗性に優れています。
用途:自動車部品、スポーツ用品、医療機器、電子機器など
グレードラインナップ:標準グレード、高強度グレード(ガラス繊維強化タイプ)、柔軟性グレード(エラストマー変性タイプ)、透明グレード(光学用途向け)、耐熱グレード(PPA)
SYENSQO(旧ソルベイ、ベルギー)
SYENSQOは、高性能ポリマーの分野でリーディングプロバイダーです。1930年代にPA6,6の開発に着手し、1950年代に商業生産を開始しました。2024年にソルベイから分社化して設立されました。
製品開発方針:SYENSQOは、高性能ポリアミド、特に長鎖ポリアミドと芳香族ポリアミドの開発に注力しています。
主要製品:Technyl®:PA6、PA66、PA6/66
Amodel®:PPA(ポリフタルアミド)
Ixef®:PARA(ポリアリールアミド)
特徴:SYENSQOの製品は、高耐熱性、高強度、耐薬品性、低吸水性を特徴としています。
用途:自動車部品、電気・電子部品、産業機械部品、航空宇宙分野
グレードラインナップ:標準グレード、高強度グレード(ガラス繊維強化タイプ、GF含有率15-60%)、耐熱グレード(PPA、PARA)、難燃グレード(ハロゲンフリー難燃タイプ)、導電性グレード(カーボンファイバー配合タイプ)、低そり性グレード(ミネラル充填タイプ)
以上が外資系メーカーの主要6社です。続いて、日系メーカーを見ていきましょう。
日本メーカー
東レ
東レは日本のポリアミド樹脂産業の先駆者です。1951年に日本で初めてナイロンの本格生産を開始し、以来、高性能ポリアミド樹脂の開発と生産で業界をリードしてきました。1970年代には高性能グレードの開発を進め、1980年代には自動車用途向けの製品ラインナップを拡大しました。
製品開発方針:東レは、幅広いグレード展開、高性能化、バイオマス由来原料の使用に注力しています。
主要製品:アミラン®:PA6、PA66、PA610、共重合
トレパール®:3Dプリンタ向け真球ポリアミド6粒子
特徴:東レの製品は、幅広いグレード展開、高性能化、バイオマス由来原料の使用を特徴としています。
用途:自動車部品、電気・電子部品、繊維、フィルム
グレードラインナップ:標準グレード(一般成形用)、高強度グレード(ガラス繊維強化タイプ、GF含有率10-60%)、耐熱グレード、難燃グレード(ハロゲンフリー難燃タイプ)、導電性グレード(カーボンファイバー配合タイプ)
旭化成
旭化成は日本の総合化学メーカーとして、ポリアミド樹脂の開発と生産で重要な役割を果たしてきました。1972年にPA66の商業生産を開始し、以来、高性能グレードの開発に注力してきました。1980年代には自動車用途向けの製品開発を加速し、現在では幅広い産業分野に製品を提供しています。PA66市場ではアジアNo.1メーカー・日系自動車を中心とした日本市場No.1メーカーと言われています。
*出典:富士経済「2023年エンプラ市場の展望とグローバル戦略」より、世界市場販売量、日本市場販売量を基に。
製品開発方針:旭化成は、PA66の一貫生産体制を強みとし、高性能グレードの開発に注力しています。
主要製品:レオナ®:PA66、PA66/6I、PA612、PA610
特徴:旭化成の製品は、高強度、高剛性、耐熱性、耐摩耗性に優れています。
用途:自動車部品、電気・電子部品、工業部品
グレードラインナップ:標準グレード(一般成形用)、高強度グレード(ガラス繊維強化タイプ、GF含有率15-60%)、耐熱グレード(熱安定剤添加タイプ)、難燃グレード(ハロゲンフリー難燃タイプ)、導電性グレード(カーボンファイバー配合タイプ)
UBE(旧宇部興産)
UBEは日本のポリアミド樹脂産業において重要な位置を占めています。1959年にPA6の商業生産を開始し、1976年にはPA12の商業生産も開始しました。以来、特殊用途向けグレードの開発に注力し、独自の技術力で業界をリードしてきました。
製品開発方針:UBEは、PA6、PA12に強みを持ち、特殊用途向けグレードの開発に注力しています。
主要製品:UBE Nylon®:PA6
UBESTA®:PA12
UBESTA XPA®:ポリアミドエラストマー
特徴:UBEの製品は、耐熱性、耐薬品性、低吸水性(PA12)に優れています。
用途:自動車燃料チューブ、電気・電子部品、食品包装フィルム
グレードラインナップ:標準グレード(一般成形用)、高強度グレード(ガラス繊維強化タイプ)、可塑化グレード(柔軟性向上タイプ)、耐熱グレード(熱安定剤添加タイプ)、バリア性グレード(ガスバリア性向上タイプ)
クラレ
クラレは高機能性ポリマーの開発と生産で知られる化学メーカーです。1990年代後半から高耐熱性ポリアミドの開発に着手し、1999年にPA9Tの商業生産を開始しました。以来、高付加価値製品の開発に注力し、特殊ポリアミド市場で独自の地位を確立しています。
製品開発方針:クラレは、高耐熱性ポリアミドに特化し、高付加価値製品の開発に注力しています。
主要製品:ジェネスタ®:PA9T
特徴:クラレの製品は、高耐熱性、低吸水性、寸法安定性に優れています。
用途:自動車部品(LED用反射板、コネクタ)、電子部品
グレードラインナップ:標準グレード(一般成形用)、高強度グレード(ガラス繊維強化タイプ、GF含有率30-65%)、難燃グレード(ハロゲンフリー難燃タイプ)、低そり性グレード(ミネラル充填タイプ)、耐摩耗グレード(固体潤滑剤添加タイプ)
グローバルポリアセタール(旧三菱エンジニアリングプラスチックス)
グローバルポリアセタールは、高機能性ポリアミドの開発と生産で長年の実績を持つ企業です。1970年代にPA-MXD6の開発を開始し、1980年代に商業生産を開始しました。2021年には三菱ガス化学からPA事業を分社化し、現在の社名となりました。
製品開発方針:グローバルポリアセタールは、芳香族ポリアミドに特化し、高機能性グレードの開発に注力しています。
主要製品:レニー®:MXD6
特徴:グローバルポリアセタールの製品は、高強度、高剛性、ガスバリア性、寸法安定性に優れています。
用途:食品包装材料、自動車部品、電子部品
グレードラインナップ:標準グレード(一般成形用)、高バリア性グレード(ガスバリア性向上タイプ)、高強度グレード(ガラス繊維強化タイプ、GF含有率30-50%)、難燃グレード(ハロゲンフリー難燃タイプ)、耐熱グレード(熱安定剤添加タイプ)
東洋紡
東洋紡は日本の繊維産業の先駆者として知られ、ポリアミド樹脂の分野でも長年の実績を持っています。1950年代からナイロン繊維の生産を開始し、以来、繊維、フィルム、樹脂の総合的な開発を進めてきました。1960年代には自動車用途向けの製品開発を本格化し、現在では幅広い産業分野に製品を提供しています。2023年4月1日より、東洋紡と三菱商事による合弁会社「東洋紡エムシー株式会社」が事業を開始し、機能素材分野での成長を目指しています。
製品開発方針:東洋紡は、「環境、ヘルスケア、高機能で、社会に貢献する価値を、創りつづけるカテゴリー・リーダー」を目指し、繊維、フィルム、樹脂の総合的な開発に注力しています。
主要製品:グラマイド®:PA6、PA66、特殊ポリアミド(MXD6など)
特徴:東洋紡の製品は、高強度、耐摩耗性に加え、耐熱性、低ソリ性、良好な外観などの特性に優れています。
用途:繊維、フィルム、樹脂成形品(自動車部品、電気・電子部品、産業資材など)
グレードラインナップ:標準グレード(一般成形用)、高強度グレード(ガラス繊維強化タイプ)、耐衝撃グレード(エラストマー変性タイプ)、フィルムグレード(二軸延伸フィルム用)、繊維グレード(各種繊維用途向け)
ユニチカ
ユニチカは日本の総合繊維メーカーとして、ポリアミド樹脂の開発と生産で重要な役割を果たしてきました。1964年にPA6の商業生産を開始し、以来、幅広いグレード展開と特殊用途向け製品の開発を進めてきました。1970年代には自動車用途向けの製品開発を加速し、現在では多様な産業分野に製品を提供しています。
製品開発方針:ユニチカは、幅広いグレード展開と特殊用途向け製品の開発に注力しています。
主要製品:ユニチカナイロン®:PA6、PA66
ユニチカナノコンポジットナイロン®:PA6
特徴:ユニチカの製品は、幅広いグレード展開を特徴としています。
用途:自動車部品、電気・電子部品、繊維
グレードラインナップ:標準グレード(一般成形用)、高強度グレード(ガラス繊維強化タイプ)、難燃グレード(ハロゲンフリー難燃タイプ)、導電性グレード(カーボンブラック配合タイプ)、耐熱グレード(熱安定剤添加タイプ)
三井化学
三井化学は日本の総合化学メーカーとして、高機能性ポリマーの開発と生産で知られています。2000年代初頭にPA6Tの開発を開始し、2011年に商業生産を開始しました。以来、高機能芳香族ポリアミドの開発と用途拡大に注力し、自動車や電子機器分野で独自の地位を確立しています。
製品開発方針:三井化学は、高機能芳香族ポリアミドの開発と用途拡大に注力しています。
主要製品:アーレン®:PA6T
特徴:三井化学の製品は、高耐熱性、低吸水性、優れた寸法安定性、高強度を特徴としています。
用途:自動車部品(電装部品、エンジン周り部品)、電気・電子部品(コネクタ、LED反射板)
グレードラインナップ:標準グレード(一般成形用)、高強度グレード(ガラス繊維強化タイプ、GF含有率30-60%)、難燃グレード(ハロゲンフリー難燃タイプ)、低そり性グレード(ミネラル充填タイプ)、耐熱グレード(熱安定剤添加タイプ)
以上が日系メーカー主要8社です。外資系メーカーと合わせると14社です。これはさすがに頭のなかで情報整理をするだけでも大変です。
では、続いて、近年の業界再編の振り返りをした後、今後の動向についてまとめていきたいと思います。
業界動向と今後の展望
事業統合と再編
PA樹脂業界では、近年大規模な事業統合と再編が世界規模で進行しています。
グローバル企業の動向:2019年:BASFがSolvayのPA事業を買収し、PA6,6事業を強化
2022年:CelaneseがデュポンのMobility & Materials事業を買収し、エンジニアリングプラスチック事業を拡大
2023年:DSMエンジニアリングマテリアルズとLANXESSハイパフォーマンスマテリアルズが統合し、Envaliorを設立
日本企業の動向:2018年:三菱ケミカルと三菱ガス化学がPA事業を統合
2021年:旭化成がUBEのPA6事業を買収し、PA事業を強化
2023年4月1日、東洋紡と三菱商事による合弁会社「東洋紡エムシー株式会社」が事業を開始
2023年4月3日:三菱ガス化学が三菱エンジニアリングプラスチックスを連結子会社化し、同時にPA事業はグローバルポリアセタール社(GPAC)に承継
これらの再編により、各社の製品ラインナップの拡充や生産能力の増強が進んでいます。グローバル企業は規模の拡大と技術シナジーの創出を目指し、日本企業も国内外での競争力強化を図っています。今後も自動車の電動化や5G通信の普及に伴う新たな需要に対応するため、さらなる事業再編が予想されます。
市場動向
PA樹脂市場は、技術革新と新たな用途開発により、今後も成長が見込まれています。特に以下の分野での需要拡大が予想されます。
自動車産業:電気自動車(EV)のバッテリーケースや冷却システム部品、軽量化に伴う金属代替材料としての使用拡大
電気・電子分野:5G基地局や高速通信機器の部品、IoTデバイスの小型・薄肉部品
航空宇宙産業:軽量化のための金属代替材料
産業機械:高耐久性が求められる部品や摺動部材
これらの需要増加に伴い、PA樹脂の世界市場規模は2028年までに年平均成長率(CAGR)5%台で拡大すると予測されています。
技術開発の方向性
PA樹脂の技術開発は、以下の3つの主要な方向性に沿って進められています。
高性能化:耐熱性、強度、耐薬品性の向上、長繊維強化技術、ナノコンポジット技術の進化、高温環境下での長期耐久性向上、低反り性と高剛性の両立
環境対応:バイオマス由来PA樹脂の拡大と植物由来原料の使用率向上、ケミカルリサイクル技術の確立と使用済みPA樹脂からのモノマー再生、CO2排出削減に寄与する製造プロセスの開発
機能性付与:導電性、電磁波シールド性などの機能性PA樹脂の開発、高周波対応グレードの開発、3Dプリンティング用PA材料の高性能化
これらの技術開発により、PA樹脂の用途拡大と環境負荷低減の両立が期待されています。
まとめ

PA樹脂は、その誕生から80年以上を経た現在も進化を続ける重要なエンプラです。グローバルメーカーと日本メーカーが技術開発を競い合い、高性能化と環境対応の両立を目指して新たな製品開発が進められています。
一方で、原料調達の安定化や環境規制への対応、新興国メーカーとの競争など、PA樹脂メーカーは多くの課題にも直面しています。これらの課題に対応しつつ、持続可能な成長を実現できるかが、各メーカーの今後の発展を左右する鍵となるでしょう。
PA樹脂の歴史は、化学技術の進歩と社会ニーズの変化が密接に結びついた、ダイナミックな発展の軌跡です。今後も、新たな技術革新と市場ニーズの変化に応じて、PA樹脂がさらなる進化を続けていくことを当社は期待しています。
本コラムの内容は、執筆時点での情報に基づいております。市場動向や各社の方針については、一部、執筆者の考察、主観も含んでおり、記載内容は各メーカーの公式情報と異なる可能性がございます。当社は本コラムの内容の正確性、完全性について保証するものではなく、本コラムの利用によって生じたいかなる損害についても責任を負いかねます。読者の皆様におかれましては、具体的な材料選定に際しては当社までお問合せをお願い致します。