成形実績一覧

半芳香族ポリアミドとは

半芳香族ポリアミドは、高い機械的特性や耐熱性、耐薬品性を特徴とするエンプラです。一般的なポリアミドと比較して優れた性能を発揮するため、自動車、電気・電子機器、工業部品などの分野で広く利用されています。耐熱性、機械的強度、耐薬品性、寸法安定性のバランスが取れた扱いやすい材料です。

一般に高剛性の材料は衝撃性が低くなる傾向がありますが、PPSやMXD6と比較して本材料は衝撃性能に優れています。

この他にも特異的な性格を有しており、PPSやMXD6では対応が難しい用途においてユニークな価値提供が可能なエンプラです。

1. 優れた機械的強度と剛性
高い引張強度と剛性を持ち、負荷がかかる環境でも優れた性能を発揮します。金属の代替材料としても採用され、軽量化が求められる用途に適しています。

2. 高い耐熱性
ガラス転移温度(Tg)が高く、熱変形温度(HDT)も非常に優れています。これにより、連続使用温度が高い環境下でも形状や性能を維持できます。自動車のエンジンルームや電気機器の高温部品など、過酷な温度条件での使用が可能です。

3. 優れた耐薬品性
芳香族ポリアミドの構造により、酸、アルカリ、有機溶剤、油脂などに対する耐薬品性が一般的なポリアミドよりも優れています。これにより、化学薬品や工業用流体に触れる部品や、過酷な環境下での使用が可能です。

4. 低吸湿性と寸法安定性
一般的なポリアミドは吸湿性が高く、湿度の影響で寸法が変化しやすいという欠点がありますが、芳香族構造を含むことで吸湿性が抑えられています。これにより、湿潤環境下でも寸法安定性を維持し、精密部品の製造や高精度が求められる用途に適しています。

5. 耐摩耗性と摺動特性
耐摩耗性が高く、低摩擦特性を持つため、摺動部品や摩耗が発生しやすい用途にも適しています。これにより、ギア、ベアリング、シール部品などの耐久性を向上させることが可能です。

6. 二次加工性
プライマーなしでアクリルウレタン塗装ができ、同樹脂、他樹脂とのレーザー溶着、超音波溶着が容易です。

半芳香族ポリアミドを推奨する用途・ニーズ

01 金属代替

金属代替

半芳香族PAは、高温時や吸湿後の機械強度、剛性、また、耐クリープ特性が高いため、外部環境に左右されにくい安定した物性が必要な部品に適しています。ダイキャスト材料の代替実績において長期の使用事例があります。

PPSやMXD6と比較して加飾性(マスターバッチ調色、塗装性、グレードによってはめっき可)が容易であり、外観部品にもお勧めしています。また、外観品質によっては無塗装での採用も提案しています。

02 水回り機器

水回り機器

半芳香族PAは、機械強度に加え、耐加水分解性にも優れているため、給湯機器用配管ユニット、飲料水流体コネクタ、水量計ハウジングなど水回り部品全般に適しています。PPSと比較して半芳香族PAは、ネジ締め強度、セルフタップ締付によるクラック発生リスク、超音波溶着性、加飾性の点で優位にあり、PPSの採用が難しい用途に提案しています。

03 空圧制御機器

空圧制御機器

半芳香族PAは、高強度、高剛性、耐クリープ特性に優れているため、水回り機器だけでなく空圧機器関連部品にも推奨しています。PA系の材料のなかでは寸法安定性に優れており、バルブプレートやフィールドバスコネクタなど高精度の部品にも適しています。

射出成形加工にノウハウを要しますが、PPSと比較してボイドが発生しにくいため厚肉成形にも対応可能です。

当社の半芳香族ポリアミド成形における強み

01 製品デザイン、金型デザインに関するノウハウ

製品デザイン、金型デザインに関するノウハウ

当社では、ガラス繊維、炭素繊維を充填した強化材における製品・金型デザインについて50年超のノウハウがあります。

製品デザインに関しては、安定的な成形加工が可能になるよう肉厚のバランス、アンダーカットの形状を提案をしています。また、バリが出にくい特徴を生かして金型合わせ面の仕様についても提案しています。また、これまで成形部品に対する湿度影響等の加速試験を実施してきた経験から部品形状についても助言が可能です。

金型デザインについては、図面の寸法公差や幾何公差を満足できる金型構成とゲート配置を提案致します。流動末端部、深いリブ、薄肉部等の充填を妨げる部位にベント設置を行い、低い射出圧力で成形できるようにしています。

02 最適な成形条件の設定と金型メンテナンス

最適な成形条件の設定と金型メンテナンス

半芳香族PAは、結晶構造を有する樹脂のため製品デザインと成形条件によって結晶化が変わり、部品のパフォーマンスに変化が生じます。当社では、材料メーカーの推奨条件だけに頼らず、部品形状に応じて金型温度を調節するノウハウを有しています。高外観を要求される部品の場合、高速の充填が必要となるのが一般ですが、金型温度をやや上げて射出速度を低めに設定します。本材料はMXD6やPPSと比較してヒケが出やすい傾向がありますが、当社では金型温度を最適化してヒケを制御することが可能です。

金型メンテナンスに関しては、各部品の形状や製品重量に応じて暫定的に設定したメンテナンス頻度で開始し、実際のガスの付着状況を確認しながら適宜メンテナンス頻度を変更しています。また、必要に応じてベントを追加することで、より高品質かつ安定した成形を実現しています。

03 部品統合

部品統合

当社では金属部品の樹脂化を積極的に提案しています。金属代替のメリットは、軽量化、防錆、オイルレス化など、様々存在しますが、部品統合と二次加工工程の省略を合わせて実現できますと、そのメリットは最大化します。金属部品は多くの場合、穴あけ、研磨、表面加工といった二次加工や、複数の部品を接合する等の組立て工程が発生するのが一般的です。

樹脂の射出成形の場合、デザインの自由度が高く、少ないプロセスで製品を組み立てることが可能なため、お客様の製造工程全体でのシステムコストの低減が期待できます。