全数検査と抜取検査の違いと使い分け ─ 射出成形品の検査方式の決め方
射出成形品の検査に使う装置については、キーエンス製 画像検査装置LM-1000を活用した射出成形品の品質管理 | 射出成形の駆け込み寺.comで当社の活用例をご紹介しています。本コラムでは検査の手段ではなく、製品を1個ずつすべて見るのか、一部を抜き取って見るのかという検査方式の選び方に絞ってご説明します。
全数検査と抜取検査の違い
全数検査は、製品を1個ずつすべて検査し、個々の良否を判定する方法です。抜取検査は、ロットから一定数を抜き取って検査し、その結果からロット全体の合否を判断する方法です。
全数検査のほうが確実だと考えられがちですが、全数検査でも見逃しはゼロにはなりません。人の目視による全数検査では、長時間の作業による疲労や慣れによって、一定の割合で不良を見逃します。全数検査にしたから安心、という前提は成り立たないことを、まず押さえておく必要があります。また、全数検査は工数がかかりますのでコストが加算されることも避けられません。
全数検査と抜取検査を使い分ける5つの判断軸
どちらの方式を採るかは、主に次の点から判断します。
1つ目は、不良の重大さです。その不良が製品の機能や安全に関わるのか、外観上の軽微なものかによって、許容できるリスクが変わります。
2つ目は、不良の出方です。射出成形では、金型や成形条件に起因する不良は、同じ現象が連続して現れます。こうした不良は抜取検査でも捉えやすいものです。一方で、異物の混入や突発的なショートショットのように、単発で現れる不良は、抜取検査ではすり抜ける可能性が高くなります。
3つ目は、検査にかかるコストと製品の価格のバランスです。4つ目は、破壊を伴う検査かどうかです。強度試験のように製品を壊す検査は、全数では行えません。そして5つ目が、工程が安定しているかどうかです。
外観は全数、寸法は抜取 ─ 検査項目ごとに分ける
実務では、製品ごとに全数か抜取かを一律に決めるのではなく、検査項目ごとに分けるのが一般的です。
たとえば、機能に関わる外観の不良は全数、寸法は抜取、という組み合わせです。寸法を全数測定するのは工数の面で現実的でない場合が多く、工程が安定していれば、抜取検査で十分に管理できます。
ショートショットのような致命的な不良については、人が検査するのではなく、成形機側で成形品の重量や射出圧力を監視し、異常のあったショットを自動で排出する方法もあります。これも全数を担保する手段の一つです。
抜取検査で決めるロット・抜取数・タイミング
抜取検査を採る場合は、次の3点を決めておきます。
まず、ロットをどう定義するかです。射出成形では、材料ロット、成形日、段取りの単位などが区切りになります。
次に、何個抜き取り、何個までの不良なら合格とするかです。抜取数と合否判定の基準は、JIS Z 9015などの規格を参照して決める方法が広く使われています。
そして、いつ抜き取るかです。射出成形では、成形の立ち上げ後、生産中の定時、生産終了前といったタイミングで抜き取るのが一般的です。立ち上げ直後は条件が安定しきっていないことがあり、終了前は金型の汚れなどによる変化が出やすいためです。
画像検査で全数化するには ─ 投資回収に必要な生産数量
目視による全数検査には、見逃しと作業者の負担という課題があります。これを解決する手段として、カメラで撮影した画像から良否を自動で判定する画像検査があります。判定のばらつきが小さく、全数を安定して検査できる点が利点です。
ただし、画像検査の導入には相応の投資が必要です。カメラや照明などの装置に加えて、製品ごとに判定ソフトウェアを開発する初期投資がかかるため、製品や装置構成にもよりますが、一般に相応(目安として数百万個)の生産数量がなければ投資を回収できません。数量の少ない製品では、目視検査と抜取検査の組み合わせのほうが現実的な選択になります。
また、全数検査は不良を後から取り除く手段であって、不良を減らす手段ではありません。どの方式を採るにしても、工程で品質をつくり込むことが前提になります。
全数検査・抜取検査の選定チェックリスト
・検査項目ごとに、全数か抜取かを決めているか
・不良の重大さと、不良の出方(連続か突発か)を踏まえて決めているか
・目視の全数検査でも見逃しが生じることを前提にしているか
・抜取検査のロットの定義を決めているか
・抜取数と合否判定の基準を決めているか
・抜き取るタイミングを決めているか
・画像検査を検討する場合、生産数量で投資を回収できるかを確認しているか
まとめ
全数検査と抜取検査は、どちらが優れているというものではありません。不良の重大さ、不良の出方、検査のコストと製品の価格を踏まえ、検査項目ごとに使い分けるのが現実的です。全数検査でも見逃しは生じ、画像検査による全数化には相応の生産数量が必要です。検査方式を決める際には、工程で品質をつくり込むことを前提としたうえで、どこまでを検査で担保するのかを発注側と成形側で取り決めておくことが大切です。
府中プラでは、製品の要求品質と生産数量に応じた検査方式をご提案しています。


