成形実績一覧

PA6とは

PA6(ポリアミド6)は、5大エンプラの一つに数えられる結晶性のエンジニアリングプラスチックです。
主成分はカプロラクタム(ε-カプロラクタム)であり、開環重合によって製造されます。PA6は、優れた機械的強度、耐摩耗性、耐薬品性を持ち、自動車のエンジン部品やギア、ベアリングの機械部品、電子部品のコネクタ、端子台及び歯車等の摺動部品の分野で幅広く利用されています。

PA6は、PA66と同様に高い強度と耐熱性を持ちますが、PA66に比べて成形時の流動性が良好であり、加工性に優れる点が特徴です。
一方、吸水性がPA66よりも高いため、水分を吸収することで寸法変化が生じる可能性があります。これにより、高精度が求められる用途では、吸湿による影響を考慮する必要があります。

さらにPA6は、PA66やMXD6と比較して衝撃強度が高く、靭性に優れていますが、耐熱性や寸法安定性の面ではやや劣るため、用途に応じた適切な選定が重要です。

1.優れた機械的強度と剛性
高い引張強度、曲げ強度、耐衝撃性を持ち、負荷がかかる環境でも優れた耐久性を発揮します。ガラス繊維などのフィラーを添加することで、剛性や寸法安定性を向上させることができます。

2.耐摩耗性と摺動特性
低摩擦係数を持ち、耐摩耗性に優れています。これにより、ギアやベアリング、スライドレールなどの摺動部品に適しています。

3.耐熱性
PA6の融点は、約220~230°Cであり、連続使用温度は約80~100°Cです。耐熱性を向上させるために、PA66やMXD6などと比較検討されることが一般的です。

4.耐薬品性
油脂、燃料、アルカリ性物質などに対して良好な耐性を持ちますが、強酸や一部の溶剤には影響を受ける可能性があります。特に、高温環境下での耐薬品性を考慮する必要があります。

5.吸湿性と寸法安定性
吸湿性が高いため、水分を吸収すると寸法が変化しやすく、機械的強度も低下することがあります。そのため、高精度が求められる用途では吸湿対策を講じることが重要です。

6.成形加工性
PA66と比較して成形流動性が良好であり、射出成形が容易です。この特性により、複雑な形状の部品でも精密成形が可能です。

PA6を推奨する用途・ニーズ

01 建材(接続金具、留め具、手すり)、産業機械部品

建材(接続金具、留め具、手すり)、産業機械部品

PA6(ポリアミド6)は、その優れた機械的強度と耐摩耗性により、建材用途に適した材料です。特に、高い衝撃強度と耐摩耗性を活かし、耐久性が求められる住宅・建材部品に使用されます。例えば、窓枠のサッシ部品や接続金具、留め具、階段の手すり支持具などに採用されています。

またPA6は、優れた機械的強度と耐熱性を持ち、小型機械部品や工具のハウジングに適しています。ファンや電動工具のハウジング、コンプレッサ内部部品、固定用クランプ、ファンのインペラなどに広く使用されています。ガラス繊維強化グレードにより剛性や寸法安定性が向上し、精密な産業機械部品にも採用されています。ただし、吸湿性が高いため、水分による寸法変化を考慮し、適切な防湿処理やグレード選定が重要です。材料選定についてはぜひ当社までご相談ください。

02 EE(電気・電子部品)

EE(電気・電子部品)

PA6は、優れた機械的強度と絶縁特性を併せ持つため、電気・電子分野の部品にも適しています。特に、コネクタ、ケーブルクランプ、端子台、スイッチハウジングなどの部品に使用され、高い強度と耐摩耗性が求められる環境でも安定した性能を発揮します。具体的な適用例として、産業用機器の配線用端子台、家電製品の電源スイッチケースなどが挙げられます。

またPA6は、PA66と比較すると吸湿性がやや高いものの、吸湿による電気特性の変化が問題とならない用途ではコストパフォーマンスの面で有利です。また、ガラス繊維強化グレードを用いることで、剛性や寸法安定性を向上させることが可能であり、耐熱性の向上も期待できます。例えば、モーターの端子ボックスや電子機器の筐体など、高い機械的強度と電気絶縁性が要求される部品に適しています。

03 住設、家具・什器

住設、家具・什器

PA6は、高い耐摩耗性と靭性を持ち、住宅・家庭用品のさまざまな部品に適用されています。例えば、オフィスチェアの構造部品、工具のハンドル、家具の可動部のヒンジ部品、まな板の脚部、包丁の柄等のキッチン用品などに使用され、日常的な使用による摩耗や衝撃にも強い特性を発揮します。

また、耐熱性と耐薬品性を活かし、電気ポットや炊飯器等の内部部品、食洗機の構造部品などの熱や洗剤の影響を受ける環境にも検討可能です。PA6の加工性の高さを活かし、複雑な形状の部品を成形することができるため、デザイン性を重視する家庭用品にも適しており、意匠性の高いキッチン用品などに検討可能です。当社は、この業界のお客様にあらゆる角度からご提案を行っています。

当社のPA6成形における強み

01 製品デザイン、金型デザイン関するノウハウ

製品デザイン、金型デザイン関するノウハウ

PA6(ポリアミド6)は、優れた機械的強度、耐摩耗性、耐薬品性を持ち、特に自動車部品や電気電子機器、機械部品に幅広く使用されています。しかし、PA6は吸水性が高く、成形後の寸法変化や機械的特性の変化が発生しやすいため、設計段階での工夫が不可欠です。当社では、PA6特有の性質を考慮し、長期的な安定性を確保する製品設計と金型設計を行っています。

まず、PA6は結晶性樹脂であり、成形収縮率が大きいため、収縮差による反りや歪みを防ぐために、均一な肉厚設計を推奨しています。また、肉厚が不均一な場合、ゲート位置や冷却回路の設計を最適化し、急激な温度変化を防ぐことで、成形後の寸法安定性を向上させています。

さらに、PA6は強度が高い反面、衝撃を受ける部分には補強リブやボス形状の最適化が求められます。当社では、リブの高さや厚みを適正に設定し、応力集中を防ぐことで、耐久性の高い製品をご提供致します。

02 最適な成形条件の設定

最適な成形条件の設定

PA6(ポリアミド6)は、優れた耐摩耗性、耐薬品性、および機械的強度を兼ね備えており、特に自動車部品、電気電子機器、産業機械などに広く使用されています。PA6は、水分を吸収しやすく、成形時に収縮や寸法変化を引き起こしやすいため、緻密な成形条件の設定が求められます。当社では、製品形状や使用環境に配慮し、PA6の特性にマッチした射出成形条件設定を行い、製品の要求精度を確保しています。具体的には、金型温度とシリンダー温度の適切な設定と、均一に冷却しています。それにより結晶化度の上昇と均一化を促し、PA6の収縮を最小限に抑え、安定した寸法精度を実現しています。

また、PA6は成形時に水分を含むことがあり、適切な乾燥が重要です。当社では、成形前に十分な乾燥を行い、湿気を取り除いてから成形を行うことで、成形不良や内部応力の発生を防いでいます。さらに、PA6は強い引っ張り強度と耐摩耗性を持つため、ゲート位置やランナー設計にも配慮し、製品の機械的強度を最大化しています。

PA6の成形実績

PA6の技術コラム