PA66とは
PA66(66ナイロン)は、ポリアミド系樹脂の一種で、結晶性のエンプラの一種です。アジピン酸とヘキサメチレンジアミンを原料にした熱可塑性樹脂であり、耐熱性や機械的強度に優れた特徴を持っています。吸湿性、耐薬品性に課題のある材料ですが、バランスの取れた性能とコストパフォーマンスの高さから、5大エンプラのひとつとして多くの産業で重要な役割を果たしています。
1. 優れた機械的強度と剛性
PA66は高い引張強度、曲げ強度、耐衝撃性を持ちます。このため、高い荷重がかかる部品や耐久性が求められる構造用途に適しています。また、ガラス繊維などで強化されたグレードはさらに高い剛性と強度を発揮し、金属代替材料としても利用されています。
2. 優れた耐熱性
PA66は、ガラス転移温度が約50°C、融点が約260°Cと、耐熱性が高い点が特徴です。これにより、自動車のエンジンルームや電気・電子機器の高温部品など、過酷な温度条件下での使用が可能です。ただし、連続使用温度には限界があり、より高温環境では他のポリアミドや高性能樹脂が必要となる場合もあります。
3. 耐摩耗性と摺動特性
PA66は、耐摩耗性が高く、摩擦係数が低いため、摺動部品やベアリング、ギアなどの用途に適しています。これらの特性により、摩耗による部品の劣化を抑え、長期間の使用が可能です。
4. 耐薬品性
PA66は、油脂、燃料、アルカリ性物質などに対して良好な耐性を持っていますが、酸や濃いアルカリ溶液、フェノール類には影響を受けることがあります。このため、化学薬品に触れる環境で使用する際には、具体的な条件を考慮する必要があります。
5. 吸湿性と寸法安定性
PA66は吸湿性があり、水分を吸収すると機械的強度が低下し、寸法が変化することがあります。このため、高精度が求められる用途では、吸湿対策や改良グレードの選定が重要です。一方で、吸湿によって靭性が向上する利点もあります。
PA66を推奨する用途・ニーズ
01 水回り機器
水道メーター、蛇口、シャワー、継手類の配管機器といった飲料水と接触する部品では金属代替が進んでいます。有毒な溶出物・汚染を防止する目的だけでなく、機械強度、耐薬品性を満たしつつ、防錆による製品の長寿命化や軽量化による輸送時の環境負荷低減とコスト削減等がメリットとなっています。
02 EE(コネクタ、リレー、モーターファン)
優れた機械物性をベースに耐摩耗性、電気絶縁性、耐トラッキング性、難燃性を備えるPA66は、EE分野の各種製品に採用されており、当社でも様々な部品の成形をしています。
当社では、無人運転による大量生産が求められる部品から有人運転によるインサート成形まで多種多様な成形品を確かな品質でお届けしています。
03 建材(ドアラッチ、取っ手、サッシ部品)
PA66は、強度、耐疲労性、耐摩耗性、良外観性に優れていることから、窓・サッシに取り付けるクレセント、ドアラッチ、取っ手など、性能とコストのバランスが重視される建材、住宅設備に適しています。
これらの用途は金属代替のテーマとも親和性が高く、従来から樹脂が選定されてきた部品にとどまらず、金属部品からの切替えを積極的に提案しています。この分野の部品は、金属代替のなかでも量産性、加工性の向上と軽量化がしやすい案件と言えます。
当社のPA66成形における強み
01 金型デザインに関するノウハウ
PA66は、ポリアミドの中でも結晶化度が高い材料であり、成形時の収縮に留意しなければなりません。特に肉厚製品の場合、材料の冷却が成形品表面、内面で著しく異なります。
金型製作においては内形状への冷却回路の設計には最新の注意を払い、お客様が想定する機械強度と寸法精度を確実に引き出します。また、流動性が高いことを想定して、スプル、ランナー、ゲートなどの金型の流路の形状、寸法や金型の合わせ面およびかん合面をデザインしています。
02 最適な成形条件の設定と成形機のメンテナンス
PA66は、結晶性樹脂のため製品デザインと成形条件によって結晶化が変わり、部品のパフォーマンスに変化が生じます。当社では、材料メーカーの推奨条件だけに頼らず、部品形状のみならずお客様における部品の使用環境も考慮のうえ金型温度の設定を行っています。
非強化グレードの場合、射出成形の際に加熱シリンダ中で逆流が発生するとショートやバリの発生等品質に問題が生じるため、逆流防止弁の定期的な交換を実施しています。
また、強化グレードの場合、ガラス繊維によるスクリューの摩耗が発生するため、当社では超高耐摩耗仕様にしています。
PA66の成形実績
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温度制御装置用コネクタ部品
こちらは半田ゴテ温度制御装置用コネクタ部品で、PA66ガラス繊維入りV-0グレードを採用しています。
オス・メスセット取り設計により微細な形状調整が求められます。流動バランスを最適化し、ショートショットやガス焼けを防止。安定した品質を実現しました。
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4条ネジ
こちらは4条ネジと相手部品です。
従来の8条金属ネジから軽量化とコストダウンを目的に樹脂化を実現しています。勾配なし・PL面なし条件を満たし、PCガラス繊維強化材を使用することで高寸法精度を確保しました。
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オートロック扉の機構部品カバー
こちらはオートロック扉の機構部品カバーで、火災時でも形状保持が求められるためガラス長繊維強化グレードを採用した事例です。寸法と強度を確保するため、大型ゲートと高速充填により高精度な成形を実現しています。
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